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ストレスとは何か?

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ストレスとは、動物の体に対して平常時とは異なる異常な状態(緊張状態)を導くものであると言えます。

緊張状態になると、カラダはどうなるのでしょうか。

例えば、大勢の人前で話をする時などは、大きなストレスがかかり緊張し、心臓の鼓動は高くなりますが、この時体の中では様々なホルモンが分泌されています。

多様なホルモンが血中に放出されると、全身の器官に以下のような様々な作用が引き起こされます。

運動器官への血液供給増大を引き起こす反応(心筋収縮力の上昇/心・肝・骨格筋の血管拡張/皮膚・粘膜の血管収縮/消化管運動低下)、呼吸におけるガス交換効率の向上(気管支平滑筋弛緩)、感覚器官の感度を上げる反応(瞳孔散大)、痛覚の麻痺、…など(1)

このような体の反応というのは、動物が敵から身を守る、あるいは獲物を捕食する必要に迫られるといった状況に対応するためにあるものです。

結局は、弱肉強食の自然界において敵と遭遇した時(闘争するか逃走するかしなければならない状況に陥った時)に、素早い筋肉の動きをとることのできる臨戦態勢になろうとして体が起こしている反応と言えます。

別の言い方をすれば、生命の危機を回避するための平常時とは異なるブースト状態(一時的に身体能力を底上げするパワーアップ状態)と言えます。

このようなブースト状態は、身体能力を高めてはくれますが、その代わりに、平常時とは異なる状態であるため体に負荷がかかるという悪影響もあります。

この様々な悪影響がストレスによって引き起こされる多様な悪影響とも言えます。

そんな悪影響があるのに、なぜ動物は大丈夫なのでしょうか。

その理由は2つあると言えます。

一つは、ブースト状態が長く継続されない、ということです。

自然界で闘争・逃走するにしても、それは一定の時間であり長期化するものではありません。

もう一つの理由は、生命の危機を回避した後に、体は平常時の状態に戻りますが、その平常時(リラックス時)に、ブースト状態によって引き起こされた悪影響(マイナス要因)をリセットするためのシステムが体に備わっているからです。

例えば、体を回復するための睡眠なども、そのシステムの一つと言えます。

だから、自然界の動物は急性ストレスを受けたとしても、それは短期的なものであるため、自然界で遭遇するストレス頻度ではカラダに問題が起こらないとも言えます。

すべては計算されて、身体の機能は進化してきています。

一方、人間が受けている慢性ストレスというのは、非常に長期間続いていくものであるため、ブースト状態の悪影響を処理しきれずに体には様々な問題が引き起こされていくと考えることもできます。

例えるなら、慢性ストレスの多い現代人というのは、体にリスクのあるブースト状態を長期間維持しているようなものであるとも言えます。

常に臨戦態勢であり、体への悪影響の修復が間に合わずに問題が蓄積し、その問題が何らかの病気というカタチで表面化してしまうのではないでしょうか。

いずれにしても、リラックスした状態というのが、動物にとっての正常な状態であり、ストレスというのは、その本来の状態を乱すものと言えます。

そして、そのストレス頻度が自然界の状態を大きく超えれば、動物は対応することができないのかもしれません。

上記のようなストレスのとらえ方というのは、学問的な考え方と言えます。

ただ、これは、ストレスというものの末端であり、もっと上流(本質)に向かって考えていかなければならないと言えます。




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