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第九節 病気に止めを刺さない。

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治すことが難しい病気の場合、治療をしたとしても治らないことは少なくはありません。

治療をしたのに治らなければ、人はどうするでしょうか。

多くの場合は、治るまで治療を繰り返すのではないでしょうか。

また、治療によって病気を取り除いたのに、まだ小さな病気が残っているかもしれないからと言って、さらに治療を続けることもあります。

病気の息の根を止めなければ不安だから、体への負担は忘れて、治療を繰り返す。

人によっては、ほんの少しだけ基準値よりも数値が高いだけだったとしても、不安になり治療を続けることもあります。

次の治療をすれば病気が治る、数値が改善すると思い、自分の納得するまで治療を繰り返しているとも言えます。

もちろん状況によっては、ある程度病気を追い込まなければならない時もあります。

ただ、そうやって、どんどん病気に深追いしていくと、いつかは病気に止めを刺すことができるかもしれませんが、気づいた時には、自分自身に止めを刺してしまっていることもあります。

現代医療は、諸刃の剣とも言えます。

体をいじることで効果を得るものであるため、やりすぎれば体のシステム自体が壊れてしまいます。

そもそも、人間のカラダを全て理解せずに体をいじっているわけであるので、いじりすぎて壊してしまう事があるのは当然であるのかもしれません。

現代医療における治療とは、あくまでも、病気を一時的に止めることで、体のもつ力によって間接的に病気を治すための手法です。

現代医療そのものに病気を治す力があるわけではなく、カラダ自身の方に病気を治す力は存在しています。

ということは、もし、カラダのシステムが壊れてしまったら、病気を治すことができる唯一の方法を失うことにもなります。

つまり、体が壊れる前に、どこかで治療を止めなければならないとも言えます。

治療によって病気が治らなかったとしても、治すことが難しい病気の場合は、できるだけ早い段階で治療をすることを止めた方がいいのかもしれません。

なぜなら、初めの治療というのは、一番体力(病気を治す力)が残っていて、最も結果を出せますが、それ以降の治療は治る可能性がどんどん無くなっていくからです。

一番結果を出せる状態(ベストコンディション)で結果を出せなかったのに、その後の、悪い状態(バッドコンディション)でそれ以上の結果が出る可能性は低いと言えます。

誰でも、負けが続くと、その負けを取り返そうとしますが、それが裏目に出た経験をしたことが一度はあるのではないでしょうか。

例えば、賭け事(ギャンブル)でお金を失ってしまうと、その損失を取り戻そうと、何度もお金をつぎ込みます。

それで勝てずに負けが続けば、損失は大きく膨らみ、やけになって泥沼にはまってしまうこともあります。

損失ができるだけ小さなうちに切り上げてしまうのが賢明です。

治すことが難しい病気において、その治療とはギャンブルに近いものであるとも言えます。

治すのが難しいということは、治療で治る確率が低いということです。

勝つか負けるかが、五分五分ではなく、もっともっと低いことも少なくはありません。

一度は、勝つ確率の低いギャンブルに身を投じてもいいのかもしれませんが、何度も望みをかけるべきではないのではないでしょうか。

病気が治っていないのに治療をしない、という選択は矛盾しているように思えますが、体に負担のかかる治療をしないというだけで、病気を治すことをあきらめているわけではありません。

病気を治すことのできる力をもつ、カラダそのものを守るために、行き過ぎた治療をしないということです。

むしろ、病気を治すために賢明な選択をしている、と考えることもできるのかもしれません。




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