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医師が病を治すのではなく、カラダが病を治す。

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医師が病を治すのではなく、カラダが病を治す。

この言葉を目にした時に、常識から逸脱したものであるとか、現代医療を批判する言葉のように感じたり、筆者が読者を引き付けるために作り上げた言葉であると考えたりするなど、様々なことを思い描くと思います。

しかし、これは、一般の人にとっては非常識(常識と異なる)と思えるような概念であっても、ある業界においては常識とも言えるような概念です。

その業界とは、医師が従事する医療の世界です。

この概念とは、医学の父と呼ばれるヒポクラテスが残した言葉です。

ヒポクラテスは紀元前5世紀にエーゲ海のコス島に生まれたギリシャの医師で、それまでの呪術的医療(例えば、病気は死神や呪い等によって生じており、健康を司る神や精霊といった超自然的な存在の力によって病気を治そうとするもの)と異なり、健康・病気を自然の現象と考え、科学に基づく医学の基礎を作ったことから、「医学の祖」、「疫学の祖」とも呼ばれています。

これは人類の医療における一つ目のパラダイムシフトと言えます。

私たちが風邪を引いた時に、「それは悪霊や死神のせいだ…」などと言うことがないのは、このパラダイムシフトのおかげであるとも言えます。

この変革により人類の医療はVer. 1.0からVer. 2.0にアップデートされ、一つ上のレベルに到達することになります。

もし、このパラダイムシフトがなければ、今でも私たちは病気を治すために神や精霊にお願いし続けていたかもしれません。

だからこそ、ヒポクラテスは、医療の世界において、非常に重要な意味を持つ人物と言えます。

彼の弟子たちが編集した「ヒポクラテス全集」には、当時の最高峰であるギリシャ医師の姿が書き記されており、その中で医師の職業倫理について書かれた宣誓文が「ヒポクラテスの誓い」であり、世界中の西洋医学教育において現代に至るまで語り継がれています。

医学校の卒業式において、この誓いを宣誓させる大学は、世界各国に多く存在しています。



ヒポクラテスの誓い(1)

(原文の直訳ではなく、わかりやすく簡略化されたものを以下に示します。)

  • 医の神アポロン、アスクレピオス、ヒュギエイア、パナケイア、及び全ての神々よ。私自身の能力と判断に従って、この誓約を守ることを誓う。
  • この医術を教えてくれた師を、実の親のように敬い、自らの財産を分け与えて、必要ある時には助ける。
  • 師の子孫を、自身の兄弟のように見て、彼らが学ばんとすれば報酬なしに、この術を教える。
  • 著作や講義その他あらゆる方法で、医術の知識を、師や自らの息子、また、医の規則に則って誓約で結ばれている弟子達に分かち与え、それ以外の誰にも与えない。
  • 自身の能力と判断に従って、患者に利すると思う治療法を選択し、害と知る治療法を決して選択しない。
  • 依頼されても、人を殺す薬を与えない。
  • 同様に、婦人を流産させる道具を与えない。
  • 生涯を、純粋と神聖を貫き、医術を行う。
  • どんな家を訪れる時も、そこの自由人と奴隷の相違を問わず、不正を犯すことなく、医術を行う。
  • 医に関するか否かに関わらず、他人の生活についての秘密を遵守する。
  • この誓いを守り続ける限り、私は人生と医術とを享受し、全ての人から尊敬されるであろう。
  • しかし、万が一、この誓いを破る時、私はその反対の運命を賜るだろう。




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