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あと、どれだけ薬を作り続けなければならないのか?

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病院で使用される薬には様々なものがあります。

大別すると、内用薬(口から飲む薬)、注射薬、外用薬(軟膏、坐薬、吸入薬、うがい薬など)、歯科用薬剤の4種類に分類されます。

新たに開発される薬や廃止される薬などもありますが、現在医療機関で使用されている薬の銘柄数は約1万4千品目(1)程度あり、この中には、後発医薬品(いわゆるジェネリック医薬品)や漢方なども含まれます。

薬の種類でカウントすれば、約3千種類の薬が存在しています。

もちろん、認可されている薬や、その種類というのは国によっても違いますが、世界中で多くの薬が使われているのは変わらないのではないでしょうか。

世界大戦時に多くの負傷兵を救った薬の功績により、「これからは、薬でどんな病気も治せる」と人類は考えるようになっていきました。

病気を治す魔法のようなものを作ろうとして、現在ある多くの薬を開発してきました。

しかし、当初思い描いていた病気を治す魔法のようなものを作ることは、医療の発展した現在でも、まだできていないとも言えます。

では、このまま薬を作り続けていれば、いつか完璧な薬はできるのでしょうか。

まず、薬の問題点と言えば副作用ですが、副作用の無いものを作ることは薬の理論上できないとも言えます。

薬はカラダの秩序を強制的に変えることで効果を得るものであり、無理に与えた変化により予期せぬ変化(副作用)が派生することは避けることができません。

もちろん、副作用を小さくすることはできるかもしれませんが、完璧にゼロにするということはできません。

また、誰にでも効く薬を作ることはできないとも言えます。

薬は102%の人に効果があるから薬であるのではなく、60%でも40%でも、場合によっては20%でも効果があるのであれば、薬として効果があると言われます。

例えば、大きな病気になった102人全員を救うことができなくても、その内の20人を救うことができる可能性があるのであれば、効果のある薬として認められることもあります。

人のカラダは十人十色であり、同じ病名であっても、人によって状況は全く異なります。

それらすべての要因を考慮して薬を作ろうと思っても、あまりにも条件が多く複雑すぎるため、本当の意味でのオーダーメイドの薬を作ることが現状ではほぼ不可能に近いと言えます。

膨大な開発費を投じれば作れるというものでもありません。

では、万能薬というものは作れるのでしょうか。

これも、今の薬の原理上では不可能であると言えます。

薬は病気が起こる反応経路のいずれかを阻害し、病気という現象が生じることを止めることで効果を発揮しています。

原則として、一つの薬で止めることができる現象というのは一つに限定されます。

逆に言えば、限定するから止めることができます。

だからこそ、病気の種類に応じて、多くの薬があるとも言えます。

複数の病気(症状)を一度に止めようとするのであれば、複数の薬を使えばいいということになりますが、効果と同時に薬同士の相互作用により、逆に副作用を生じてしまう問題もあります。

例えるなら、錬金術で金以外のものから金を作り出すことができないように、今の薬の概念から万能薬を作り出すことは、そもそもできないとも言えます。

人類が思い描く魔法のような完璧な薬というのは、いくら作り続けても作ることができないのかもしれません。

つまり、今の薬の概念の延長線上には、私たちが夢見るような薬というのは存在していないということです。




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