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第八節 ほんの少しの治療で止める。

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動物(生き物)は、傷つけられ、自身が殺されるかもしれない状況に追い込まれると、身を守るため、予想もしない行動をとることがあります。

そのため、動物を殺す時は、一瞬で仕留められるように細心の注意を払います。

生命は、追い詰められた時に、ものすごい力を発揮し、本能的に何としても生き延びようとします。

病気も同じように、治療で、いじめればいじめるほど、予想もしない状況になったり、反逆されたりすることがあります。

窮地に追い詰められた敵ほど、怖いものはない、とも言えます。

また、治療を繰り返すと形勢が逆転することもあります。

病気が急激に進行しないのは、体自身の生命力によって病気自体を抑え込んでいるからです。

しかし、体に負担のかかる治療によって体が弱れば、それと同時に、病気を抑え込んでいた力そのものも弱ります。

体の抑制から解き放たれた病気は、相対的に強くなり、勢いを増すことがあります。

それによって、余計に病状が悪くなることがあるのかもしれません。

治すのが難しい病気の場合、現在の人類の知識レベルでは、ほんの少しの治療で止めておいた方が良いのかもしれません。

では、負担の小さな治療であれば、たくさん治療してもいいのでしょうか。

世の中には、様々な治療法があります。

治すのが難しく人々が困っている病気だからこそ、その需要に答える形で日々新しい治療法が登場します。

体への負担を小さく改善したものや、アプローチを変えたものなど、常に新しい方法が提案されています。

今までにない治療法は、病気を治すのが難しい状況の中で登場するため、期待も高くなります。

それによって、患者は治るのではないかと思います。

新しいものほど治療費が高額になることもありますが、それでも試したいと思う患者は少なくはありません。

しかし、本当に負担が無いのでしょうか。

人間のカラダを意図的にいじってしまう時点で、それは体に負担を与えているとも言えます。

想定外の副作用に気づいていない可能性もあります。

負担も少ない、これで治せる、というように自分たちでつくったものを過信し、自分たちの知識レベルを忘れてしまうと、危険なのではないでしょうか。

治すのが難しい病気というのは、治すのが難しいという時点で、人類はその病気に対してプロフェッショナルではありません。

人間のカラダがよく理解できるまでは、慎重に、あまり深くカラダの中に踏み込まない方が、逆にいいのかもしれません。

また、病気を完全に倒す必要性は無いとも言えます。

なぜなら、体の中で発生した病気を完全に無くすことは、そもそも不可能であるからです。

体の中から手術で病気を取り除いても、薬でいくら小さくしたとしても、体の中から病気は無くなりません。

例えば、庭に生えている雑草を、すべて根こそぎ摘み取ったとしても…、除草剤をいくら撒いても…、時間が経てば、また雑草はいくらでも生えてきます。

毎日生まれてくる病気を抑え込める力が無ければ、何度病気を取り除いても同じことです。

だから、病気を一時的に回避できるだけの最低限の治療で十分であると言えます。

治すのが難しい病気の場合は、治療という行為によって、病気を完全に治そうとしてしまわなくてもいいのではないでしょうか。




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