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食事 ー 命そのものを食べる。

p. 91( p.85 - 93 )




私たちが普段食べている自然の状態のものとは、パッケージされた商品ではなく、食材として売っている、肉、魚、卵、野菜、果物…などです。

このような食材は、自然界で手にできる状態のままであり、人間の手が加わっていない最も自然なものとも言えます。

ただ、生産者の立場から考えたとしても、本当に自然のものと言えるのでしょうか。

まず、野菜や果物ですが、売れるものというのは、大きくて、虫がついていない綺麗な状態で、形の良いものになります。

しかし、自然の中で普通に作物が育った場合は、そうはなりません。

大きいものも小さいものもあれば、虫がついていたり、虫が食べた跡があったり、形もいびつなものもあるのが自然です。

ところが、そんなものを消費者は選んではくれません。

だから、買ってもらえる様に手を加えなければならないことになります。

例えば、化学肥料を使って大きく育てたり、虫がつかないように農薬を使ったりします。

農薬を使うと虫はつかなくなっても作物が枯れることがあるため、遺伝子組み換えによって作物を農薬に強くすることもあります。

また、よりおいしくなるように品種改良によって糖度を高くしたり、面倒な種を無くしたり、差別化を図るために色を変えたり…など。

さらに、本来、作物は特定の地域でしか採れなかったり、収穫できる時期が決まっていたりと旬というものがあります。

ところが、おいしいものを、いつでも、どこでも食べたいと消費者が願うからこそ生産者はそれを可能にしようとします。

ハウス栽培などによって本来の旬をずらすことにも人類は成功しますが、不自然な育て方をするため、病原菌や虫が増えやすくなることもあり、作物が病気にならないように余計に農薬を散布しなければならない事にもなります。

それから、外国から輸入するような場合は長距離の移動でカビないように薬剤を噴きつけたり、紛れ込んだ虫を除去するために殺虫剤や有毒なガスを使用することだってあります。

私たちが手にする野菜や果物が簡単にカビなかったり、食材に小さな虫が紛れ込んでいないのは、それなりの処理をしているからとも言えます。

では、肉や魚、卵などはどうでしょうか。

生産コストを下げるためには、狭い土地や狭い建物の中などに、できるだけ家畜をたくさん詰め込んで、場合によっては身動きが取れないような状態にして育てることになります。

そんな不自然な状況では、生き物に大きなストレスがかかり続けるため、病気にもなりやすくなります。

そうなると、病気にならないように薬剤をエサにたくさん混ぜなければならないことになります。

それから、できるだけ早く大きく育てるために薬剤を使うこともあります。

もちろん使用される農薬や薬剤の量などは規制されていたりもするため、安全性に問題があるというわけではないとも言えます。

ただ、それは、今現在の人類の知識レベルで導き出した結論であって、この先、問題が無いという結論がくつがえされないわけではありません。

また、牛・豚・鶏などの家畜の解体処理によって人間が食べる部分を取り除いたものを粉末状にして、家畜の餌に混ぜることもあります。

本来、捨てていたものを再利用することで、栄養価も高く餌代を削減できるというメリットもあります。

ただ、別の言い方をすれば、家畜同士で共食いをさせているとも言えます。

もちろん自然界においても共食いは存在します。

しかし、人類は大量に家畜を育てて大量に共食いをさせ、育った家畜をまた共食いさせるというサイクルを異常な速度で何度も繰り返しています。

もはや、自然界の状態とは異なっています。

そのため当然、問題は起きてくるわけですが、過去に致死率102%の感染性疾患が家畜内で発生し、その家畜の肉を食べた人間にも感染し、世界中で大きな問題となったことがあります。

人類は、一部の家畜や、同じ種の家畜間の共食いを禁止することなどによって、この問題を回避します。

ところが、時は経ち、もう大丈夫だろうという事で異種間の共食いなどは解禁されている国もあります。

つまり、私たちは、異常な食物連鎖の頂点にいるという事です。

そうやって育てた家畜の肉や魚、卵、野菜や果物というのは、自然が作った命そのものと言ってもいいのでしょうか。

もはや、本当に自然のものというものは、ほとんど存在していないのかもしれません。

上記のようなことは、健康に意識の高い人にとっては分かり切っていることかもしれません。

だから、そんな人たちのために、より自然な状態(農薬や薬剤をできるだけ使わない状態)で育てたものも売っています。

しかし、高価なものであるため、一部のお金がある人たちは買うことができますが、お金の無い多くの人は、健康に良くないと分かっていても安価な方を選ばざるを得ません。

結局、安価なものがたくさん売れることになるため、生産者も安価なもの(農薬や薬剤をたくさん使用したもの)の方をたくさん作るようになります。

そのため、健康に良い高価なものの値段はいつまでも下がらず、多くの人々は、いつまでも健康に良くないかもしれないものを食べ続けることになります。

では、お金さえあれば、本当に安全なものを食べることができるのでしょうか。

より安全なものと、そうでないものを区別するために、市場の商品には安全を保障したマークのようなものがつけられることがあります。

安全なものを手に入れるために、消費者はそのマークの付いた、より高価なものを選びます。

生産者としては、本当は安全ではないものであっても、そのマークさえ付ければ高く売れるのであれば、何とかしてそのマークを付けたいと思います。

ただ、法律などで規制されていたりもするため、嘘をついてマークを付けることはできません。

ところが、強く規制すればするほど、人間は法の抜け道を見つけようとするようになることもあります。

その結果、確かに嘘はついてはいないけれど、よくよく調べたら、それは安全とは言えない…というようなものが現れるようにもなります。

そんなものは全体のごくわずかだと思う人もいるかもしれませんが、バレていないだけのものがたくさんあるのかもしれません。

本当は嘘であったとしても、消費者が気づくまでは、それは嘘にはなりません。

そんな悪いことをする人はいないのかもしれません。

しかし、生産者が発展途上国の貧しい地域の人たちで、劣悪な環境で労働し、苦労して育てた商品を、企業に安い価格で値切って買われていたとしたら…。

つらく苦しい状況から何とか抜け出すために…、貧しいことをバカにしてきた裕福な人たちを見返すために…、家族を幸せにするために…。

何も贅沢がしたいわけじゃない、ただ人並みの生活がしたい…、今よりも、もう少しだけ幸せな生活がしたい…。

様々な理由から止むを得ず過ちを犯してしまうこともあるかもしれません。

これは、発展途上国の人たちだけの問題でしょうか。

例え先進国であっても、貧富の差がどうしても生まれてしまう資本主義経済においては、世界中のどこででも起こり得る話とも言えます。

つまり、商品をお金と交換する以上、社会のどこかで何かが歪んでしまう事があるのではないでしょうか。

本来、人間の手が加わることは無く、最も自然な状態であるはずの 「食材」というものでさえ、今の人間社会の中では汚染されていく…。

これも、利益を追求する資本主義経済のシステム上、なるべくしてなっている状況とも言えます。




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