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人のもつ力が未来の医療を変える。

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人間のカラダのテクノロジーは大きな可能性を秘めています。

場合によっては、大切な体を切除せずに病気を治せたり、副作用の大きな薬を使用する必要性も無くなったりする可能性も全く無いわけではありません。

今まで、つらく苦しい思いをしなければ回避できなかったような病気が、全く違うカタチで治せるかもしれない…。

そんな可能性を秘めているとも言えます。

それで人類が考え出したのが、免疫療法のような、体内システムを利用することによって病気を治そうとするものです。

多くの病気は、免疫システムが弱っていることによって生じているとも言えます。

だからこそ、免疫を活性化させて病気を治そうという考えにたどり着きます。

理論的には、免疫を活性化させたり、免疫システムをうまく利用したりしてやれば、病気を治せるはずでした。

しかし、実際には上手くいきませんでした。

これまでに多くの方法が考えられてきました。

例えば、免疫が活性化される時に体内で分泌されている成分を、体外からたくさん注射してあげれば活性化するだろう…。

免疫細胞を患者から取り出して特殊な仕掛けで活性化したり、増殖させたりした後に、体内に戻してあげれば免疫が活性化するだろう…。

免疫系には自己を攻撃しないためにリミッターが付いているから、その安全装置を外してやれば、もっと免疫が活性化して病気は治るだろう…。

現在でも多様な方法が検討されています。

それによって薬を作成し実際に試すわけですが、副作用が大きかったり、思ったほどの結果を出すことができなかったりするというのが現状です。

ノーベル賞を受賞するような免疫の最新情報を元に、新しい治療法というものは作られます。

その治療法ができるまでは、その画期的な理論や期待感から、この治療法によって、やっと病気を治すことができる、と多くの人は思います。

しかし、現実はそんなに簡単ではなく、もう何度も何度も失敗しているとも言えます。

結局、人間の体のことに関して、新しいことは幾つもわかってきてはいますが、やはり全部を理解しなければ駄目だということなのかもしれません。

例えば、人間の体のことを記した分厚い本があったとして、その本の数十ページを読んだだけで、病気を治そうとするのは根本的に無理なことなのかもしれません。

そして、人間の体のことを記した分厚い本というのは、実は一冊ではなく、図書館に入りきらないほどの量があるのかもしれません。

人間の手によって、自身のカラダのシステムを少しいじれば病気を治せる、と人類は思ったけれど、そう考えるのは、まだまだ早かったのではないでしょうか。

では、人間の体がすべて理解できるまで、病気を治すことはできないのでしょうか。

人のもつ力が未来の医療を変えるかもしれない可能性がある、ということは分かっているのに、この体の優れたテクノロジーをうまく使いこなすことはできないのでしょうか。

いずれにしても、今のやり方と同じように、何度薬を作り続けても上手くいかないのではないのかということは容易に想像できます。

なぜなら、人間の体をすべて理解できる日は、すぐには来ないからです。

もちろん奇跡的にブレイクスルーする可能性はゼロではありませんが、これまでの歴史を振り返ってみても、その可能性は非常に低いと言えます。

よくわからない状態で人間の体をいじるのであれば、どんなルートを経ようとも、結局は同じ結末にたどり着くのではないでしょうか。

そうなると、人間の体をすべて理解していなくても、体の優れたテクノロジーをうまく利用できる方法が求められると言えます。

まるで矛盾するようなことを言っていますが、私たちは、この問題を飛び越えなければならないのかもしれません。




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