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あと、どれだけ薬を作り続けなければならないのか?

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それでも人類が薬を作るのを止めることがないのは、なぜでしょうか。

もし、長い歳月をかけて薬を作り、効果が無かったとしても、その間に時間は流れています。

様々な研究も進み、人体のことが少しずつ明らかにもなってきます。

今までに無かった情報や画期的と言われるような考えが発表されれば、それらから病気を治すための新しい理論を思いつくようにもなります。

今までとは違う画期的な理論であるから、問題も起こらないし病気も治せるだろう…。

新しい理論であれば、次なら上手くいくと思うようにもなります。

これらの理論をもとに薬を設計し再度薬を作ります。

新しく作った薬によって、上手くいくこともあれば、それでもやっぱり上手くいかないこともあります。

上手くいかなければ、また新たに分かった人体の新情報から、新しい理論で薬を作るということを何度も何度も繰り返しているとも言えます。

人間のカラダの情報が少しずつ分かってくるから、それによって新しい理論も生まれるし、新理論の期待感から薬を作るということは止まらないのかもしれません。

問題なのは、どんどん人間のカラダの中に踏み込んでいっているということです。

踏み込むということは、より、よく分からないリスクの高いカラダの世界へ入るということです。

完璧に理解した上で入っていく分には問題は起こらないのかもしれませんが、新たに少し人体のことが分かったからといって踏み込んでしまうと、大きな危険を冒すことにもなります。

近年では、カラダが病気を治すための体内システムの根幹部分をいじってしまうような原理の薬も存在するようになってきています。

患者によっては、画期的と言われるような効果を出せることもありますが、その患者の数というのは、ほんのわずかな場合も少なくはありません。

また、カラダの奥深くをいじった分、人によっては非常に大きな副作用を伴うこともあります。

今の人類の知識レベルで、そこまでいじっても大丈夫なのか、と思うようなところまで、病気を治すためにカラダをいじろうとしているとも言えます。

病気を治すことにとらわれ過ぎて、人類は自分でできること以上のことをしようとしているのかもしれません。

子どもが赤信号を渡ろうとする様な危険な行為をしようとしている場合は、大人が止めてくれることもありますが、それを大人がしようとしている場合は、自分で気づかなければ誰も止めてはくれません。

危険を冒さなければ、手に入れたいものを手にできないということもありますが、少し時期尚早な部分もあるのではないでしょうか。

既に、挑戦したけれど残念ながら結果を出せなかったというような薬は幾つも存在してはいないでしょうか。

もしかしたら、これ以上カラダに踏み込むのは、止めておいた方がいいのかもしれません。

これから人類は薬を作り続けていくのか、それとも「人間の手で病気を治す」というエゴを捨て、「人間のカラダが病気を治す」という本来の概念に戻すのか…。

もし、現在ある、約3千種類の薬の数が減り始めた時は、現代医療に何か大きな変革が起き始めたサインと言えるのかもしれません。



変革を起こすためには、医療概念の転換が必要とも言えます。

概念を切り替えれば、もしかしたら、より高度な発展を遂げることができるかもしれない。

しかし、根幹となる考え方を変えることは現状の医療に不利益を与える可能性も無いわけではありません。

まさにジレンマと言えます。

では、現代医療の抱えているジレンマとは、一体なんなのでしょうか。




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