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薬は様々なリスクを伴う。

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そもそも薬の副作用とは何なのでしょうか。

先にも述べたように、薬とは病気の症状が起こるための物語のどこかを邪魔することで、物語の結末(病気の症状)を起こさせないようにするものです。

ただし、薬によって、変えたかった物語の結末は起こらなくなっても、どこかを邪魔したことで別の物語の結末は必ず起こります。

その結末がバッドエンディングであれば、それが薬の副作用ということになります。

例えば、Eという病気(症状)があり、それはA→B→C→D→Eという反応経路を経て起きているとします。

AからEまでの反応経路のどこかを阻害することでE(症状)は起こらなくなります。

もし、B→Cを阻害すれば、その先の反応は起こらないため、結果としてEは起こらないということになります。

このような原理によって、薬は病気の症状や進行を一時的に止めているとも言えます。

しかし、B→Cを阻害した場合、その影響によって、Cは起こらなくなりますが、新たにB→X→Y→Zという別ルートの反応経路ができてしまう事もあります。

もし、最終的に起きたZという現象が人体にとって好ましくない症状であった場合、それが副作用と呼ばれることになります。

具体的な例で言えば、風邪薬によって鼻水を止めた場合、その影響によって眠くなるという別の症状(副作用)が起きてしまいます。

薬を使い、ほんのわずかな変化を体に与えることで、その後の体の状態は大きく変わります。

このような現象を比喩するものとして、「バタフライ効果」という言葉があります。

ある気象学者は、「蝶がはばたく程度の非常に小さな攪乱でも、遠くの場所の気象に影響を与えるのではないか」という問いかけと、「それが正しければ、観測誤差を無くすことができない限り長期的な気象予測は困難になる」と言っており、バタフライ効果とはその提言に由来します(1)(2)

つまり、わずかな変化が別の変化を生み、それがまた別の変化を生じる。

そうして変化というものが積み重なっていった場合に、最終的には予想もしないような大きな変化を生むことになる、ということを意味しています。

それと同時に、様々な現象は一定の法則によって起きているため、ある程度は確率や統計などによって予測することができるけれども、物事をすべて完璧に理解できていなければ、将来どうなるかを予想することは非常に難しいということも言っています。

人間のカラダは、小さな宇宙とも言われるように、非常に複雑なものです。

その複雑な体の秩序を薬でわずかに操作することによって、病気を一時的に止めることができたとしても、そのわずかな秩序の乱れが、人間の体が複雑であるがゆえに、予期せぬ副作用をどうしても生み出してしまう事になります。

つまり、副作用が起こらないように予測して薬を作ったとしても、人間のカラダを完璧に理解できない限り、何らかの副作用が起こることは避けられないと言えます。



病気を治すために薬を使い続けるということは、副作用や発がん性リスク、予期せぬ将来リスク、あるいは死亡するリスクなど、大小様々な、ありとあらゆるリスクを体に抱えることになるとも言えます。

現在の薬の理論である、「カラダの秩序を変えることで効果を得る」 という根本的概念が変わらない限り、薬のリスクから逃れることはできないのかもしれません。

また、高齢者になると病気を治すために複数の薬をたくさん飲用し続ける場合もありますが、病気を治そうとしているつもりが、薬でカラダの秩序を変え続けることで、逆に別の病気そのものを引き起こしてしまっている可能性も完全に否定することはできないのかもしれません。

できることなら、生涯を通じて、なるべく薬は使用しない方が良いことですが、どうしても薬に頼らざるを得ない時もあります。

しかし、薬に頼るということが一体どういうことなのかを理解しておくことは非常に重要なことではないでしょうか。

私たちは、日常の中で気軽に薬を利用していますが、本当は、もっと慎重に、ここぞという時に薬は使うべきものなのかもしれません。



ここまで、薬とは何かということについて述べてきました。

では、薬に限らず、病気を治すために私たちが利用している現代医療とは一体なんなのでしょうか。

次章では、現代医療について深く考えていきます。




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