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なぜ、薬が病気を治すと信じる世界になったのか?

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大戦中に多用されるペニシリンですが、その数年後には、ペニシリンに耐性を持つ菌がすぐに発見されます。

これは、いずれ効果が無くなるという「薬への警鐘」の一つとも言えます。

しかし、当時の人々の頭の中では、ペニシリンを使えば病気が治るという風潮になっているため、どんな病気にもペニシリンを使うような無秩序な濫用が繰り返されることになります。

それが引き金となり、耐性菌の発生は拡大していきます。

1960年代にはペニシリン耐性菌の問題が顕著化し、医療上の大きな問題ともなっています。

それと同時に、ペニシリンをベースに、似たような抗生物質の開発が繰り返されるようになります。

薬が効か無くなれば、次の薬…、そのまた次の薬…へと、延々と薬を開発する歴史は、すでにこの時点から始まっています。

薬への警鐘は、上記のようなものだけではなく、ペニシリン・ショックという一種のアレルギー症状によって重篤な症状を引き起こす患者も現れます(1)

これも、効果と引き換えに副作用が生じるという「薬への警鐘」であったと言えます。

ペニシリンによるアレルギーの発生率は0.7-10%とも言われています。

中には、ペニシリン・ショックによって死亡者が出ることさえあり、各国で問題にもなりました。

「いくら副作用があっても、たとえ死ぬことがあっても、それで助かる人がいるのであれば、薬は使われる」という歴史も、すでに、この時点から続いているとも言えます。

人類初の画期的な薬の登場と同時に、何度も薬への警鐘は鳴らされてはいましたが、「薬が病気を治す」という、一度固まってしまった概念は変わることなく、現代まで続いています。

しかし、様々な警鐘に耳を傾けずに、走り続けてしまった現代医療は、わずか百年も経たずに大きな壁にぶつかってしまいます。

薬の副作用に加えて、薬では治せない病気も山のように生まれており、徐々に限界が見え始めているのではないでしょうか。

このまま、「人間の手で病気を治せる」と信じて、走り続けても大丈夫なのでしょうか。

一度踏み止まり、深く考え直す必要性があるのかもしれません。




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