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なぜ、薬が病気を治すと信じる世界になったのか?

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このペニシリンの登場によって、「薬によって病気を治すことができる」という大きなパラダイムシフトの一つのきっかけが起きたとも言えます。

人間は、目の前で起きたことを強く信じます。

例えば、ここに、どんな癌でも治すことのできる薬がある、と言っても誰も信じませんが、その人の友人や家族の命が助かれば、話は変わってきますし、本物だと信じるようになります。

第二次世界大戦中に、負傷した友人や知り合いが、ペニシリンによって助かっていきます。

そんなことが、戦禍である世界中の至るところで同時多発的に起これば、人類の頭の中に、「薬で病気が治る」という新しい概念が生まれたとしてもおかしくはありません。

その後も、薬で病気が治るという現象が繰り返されるたびに、芽生えた概念は、どんどん大きくなり、成長した大樹のように固く動かざるものへと変化していきます。

そして、薬で病気が治る、という概念に留まるだけではなく、「これからは、どんな病気であっても、薬さえあれば治すことができる」という人間の新たなエゴを生み出してしまったとも言えます。

日常で例えるなら、自分のやること成すことが全て上手くいっている時というのは、自分は何でもできるのではないか、と思う時がありますが、ちょうどそのような感覚に近いのかもしれません。

「これから、薬が病気を治すという新しい世界が始まる」と、世界中の誰もが信じていました(1)

もちろん、パラダイムシフトを起こした原因はペニシリンだけというわけではなく、ペニシリンが存在する前から、その他の様々な薬の効果や治療法の成果によって、何世代にもわたって時間をかけながら、徐々に、人々の考え方(概念)は切り替わっていったと言えます。

例えるなら、窓を開け、部屋の古い空気が、外の新しい空気と徐々に混じり合いながら、時間をかけて入れ替わってしまうようなものです。

新しい考え方をする人の全人口に対する割合が、時間をかけながら徐々に増えていき、一定の割合を超えることで、その考え方は個人の認識から全体の認識(常識)へと変化します。

これは、特定の誰かや集団が、強制的に世界中の人々の考え方を変えたのではなく、人類が自ら自然に考え方を変えていったのではないでしょうか。




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