TOP > 成分情報 > β-グルカン解体真書

序章|免疫サプリメントについて

4. 免疫サプリメント選びで迷った時に。

04

α-グルカン(AHCC , LEM)と β-グルカン(黒酵母)の違い。

α-グルカンとβ-グルカン
α-グルカンとβ-グルカン

Introduction -導入-

α-グルカンもβ-グルカンも免疫を上げる成分ですが、一体何が違うのでしょうか。また、どちらを選んだ方が効果が高いのでしょうか。

グルカンの主な由来。

私たちの身近にあるα-グルカンの代表例は、デンプン(片栗粉など)です。

また、β-グルカンは、ゴボウや大豆に含まれるセルロースとも言われる食物繊維が有名です。

α-グルカンとβ-グルカン
α-グルカンとβ-グルカン

植物の細胞壁を構成する成分や、植物や動物のエネルギー貯蔵のための成分、細菌などの微生物が産生する成分などです。

グルカンとは?

ブドウ糖は別名グルコースとも呼ばれますが、このグルコースが、どんどんくっついていき、長い鎖のようにつながったものをグルカンと言います。

グルコースとグルカン
グルコースとグルカン

正確には、グルコースが10個以上つながったものをグルカンと言います。

α-グルカンとは?

α型のグルコースが結合したグルカンの総称です。AHCCやLEMなどが有名です。

α型グルコース
α型グルコース

α型グルコースがどのように結合していくのかで、最終的な成分の立体構造は大きく変わります。


AHCC(シイタケ菌糸体培養抽出物)

AHCCは、シイタケの菌糸体を培養して作ります。菌糸体とは、わかりやすく言えば、シイタケの下部から根のように成長する“カビ”のことを意味します。

シイタケ菌糸体
シイタケ菌糸体

つまり、AHCCというのは、シイタケのカビ(菌)を熱水に溶かして培養して、その培養液(水+カビ+カビが産生するα-グルカン)をまるごと乾燥させた粉末のことです。


LEM(シイタケ菌糸体抽出物)

LEMは、AHCCのように培養ではなく、菌糸体を土の中で自然に成長させて、その土壌からまるごと成分を抽出しています。

AHCCがα-グルカンが主成分であるのに対し、LEMは、α-グルカンからβ-グルカン等様々な成分を含んだ混合物になります。

AHCCとLEM
AHCCとLEM

AHCCとLEMの違いとは?

どちらもシイタケ菌糸体の菌体外産生物ですが、AHCCは菌を人工的に培養し、LEMは自然に菌を成長させます。菌の成長条件が異なるため、産生される成分も異なります。

※菌糸体の菌は一つではありません。より正確には、AHCCとLEMでは菌糸体の菌自体も異なるため、できる成分も異なるとも言えます。

β-グルカンとは?

β型のグルコースが結合したグルカンの総称です。

β型グルコース
β型グルコース

β型グルコースがどのように結合していくのかで、最終的な成分の立体構造は大きく変わります。


β-グルカン(黒酵母)

β-グルカンは、製造方法の違いから、主に4タイプに分類されます。


・大麦由来
・パン酵母由来
・キノコ由来
・黒酵母由来


β-グルカンは、パン酵母やキノコの細胞壁に含まれるため、これらを抽出・精製して取り出します。

しかし、抽出・精製には膨大なコストもかかるため、微生物の菌体外に産生させたのが黒酵母のβ-グルカンです。

βグルカン(黒酵母)
βグルカン(黒酵母)

※微生物(黒酵母)の菌株の種類により産生されるβ-グルカン(β-1,3-1,6-グルカン)の分子構造も立体構造も異なります。

成分は違うが、根本的な作り方は同じ。

簡単に言えば、α-グルカン(AHCC, LEM)もβ-グルカン(黒酵母)も、微生物がその体外に産生する成分です。

α-グルカン(AHCC,LEM)とβ-グルカン(黒酵母)
α-グルカン(AHCC,LEM)とβ-グルカン(黒酵母)

なぜ、成分が違うの?

培養する微生物や培養条件が異なるため、微生物に作られる成分も違うということになります。

免疫を上げる基本的なメカニズムは同じ。

LEMには免疫抑制の解除という特殊な機能性もあるとは言われていますが、成分が違っても免疫が上がる基本的な概念に大きな変わりはありません。

「病原体が入った!」と、体に思わせることで、免疫力を上げる。


免疫が上がる仕組み。

そもそも、人間のカラダに病原体(風邪のウィルスや細菌など)が入ると、その病原体を排除するために自然に免疫は上がります。

α-グルカン(AHCC,LEM)とβ-グルカン(黒酵母)
α-グルカン(AHCC,LEM)とβ-グルカン(黒酵母)
α-グルカンもβ-グルカンも微生物(分かりやすく言えば"カビ")の産生する成分であるため、カラダは異物(病原体)であると判断します。そのため免疫が上がるという仕組みです。

なぜ、病原体と誤認されるのか?

病原体と立体構造がよく似ているので、α-グルカンもβ-グルカンも病原体であるとカラダは誤認します。

病原体と免疫賦活成分
病原体と免疫賦活成分

より正確には、病原体の表面に存在するPAMPs(病原体関連分子パターン)と立体的な構造が酷似しています。

受容体の種類が違う。

人間のカラダの細胞には、ありとあらゆる病原体に遭遇した時に、病原体であると認識できるように幾つもの受容体が存在します。

免疫賦活メカニズム
免疫賦活メカニズム

受容体に病原体(免疫賦活成分)が接触すると、「病原体がカラダに侵入した!」という信号がシグナル伝達されます。その後、病原体侵入の情報が、免疫細胞などで共有されたり、免疫細胞が活性化されることで、最終的に免疫力が上がるという事になります。


認識される受容体が違う。

受容体のことをパターン認識受容体と言いますが、いくつもの種類があります。

そのうち、α-グルカン(AHCC, LEM)はTLR-2、β-グルカン(黒酵母)はTLR-4という受容体で認識される傾向があります。

免疫賦活メカニズム
免疫賦活メカニズム

ちなみに、乳酸菌はTLR-2、LPS(リポ多糖)はTLR-4という受容体で認識されると言われています。

PRRs(Pattern recognition receptors:パターン認識受容体)としては、 TLR(トールライクレセプター:トル様受容体)、Dectin1(デクチンワン)、CR3(シーアールスリー)などが報告されています。

どの受容体でも免疫は上がる。

「○○の受容体に認識されたほうが免疫がより上がる」というような優劣をつける分類は存在しません。

どの受容体に認識されたとしても、理論上は免疫は活性化されます(※ただし、実際は成分によって上げれるレベルは違う)。

どちらが効果があるのか?

α-グルカンと言っても、一つの成分ではなく、その中に無数の異なるα-グルカンが存在します。β-グルカン(β-1,3-1,6-グルカンであって)も同様です。

α-グルカンとβ-グルカン
α-グルカンとβ-グルカン

※どんな分類であっても、効果のあるものもあれば、そうでないものもあります。

効果のあるものを分類することが、そもそもできない。


人間の細胞の受容体は、立体構造で認識しているため、成分の形が変われば、効果は変わってきます。

つまり、単純に、「○○の方が効果がある」というように分類することは、本来はできません

また、化合物は立体構造が少しでも変われば、同じ分類であっても性質は大きく変わります。そのため、分類で優劣をつけること自体に意味が無いとも言えます。

α-グルカンとβ-グルカン
α-グルカンとβ-グルカン

同じ黒酵母のβ-グルカンであっても、黒酵母の菌株が違えば産生されるβ-グルカンの分子構造も立体構造も全く違います。

分類は、効果に影響しない。

α-グルカンやβ-グルカン(β-1,3-1,6-グルカン)などの分類は、効果に影響を与える要因ではありません。どちらかに分類されていることが、より免疫を上げる根拠にはなりえません

商品の科学的根拠が重要。

効果を決める最も重要な情報とは、購入を検討している商品そのものの情報です。

つまり、その商品を飲んだ時に、「免疫が間違いなく上がることが臨床試験で証明されているかどうか」が重要です。安全性に関しても同じです。

効果のある商品と効果の無い商品(免疫サプリメント)
効果のある商品と効果の無い商品(免疫サプリメント)

失敗しないために。

「○○の方が効果がある」というような情報を探している人は多いと思います。しかし、販売業者が作り出した勝手な優劣の分類で選べば、商品選びに必ず失敗するとも言えます。

臨床試験の規模が重要。

臨床試験と言っても、その規模には大きな差があります。自社で10~20名程度のボランティアを集めて実施したものから、大学病院や市民病院など複数の病院で連携して大規模な共同研究を実施しているものまであります。

なぜ、規模が大きい方がいいの?

大学病院や市民病院など、研究に関わる機関が複数になるほど、お互いの目が抑止力となり、研究データをごまかすようなことができなくなってきます。

被験者の数が多ければいい?

血液採取などが必要な高度な試験であれば、費用も手間もかかるため、人数は少なくなります。逆に、QOLなどのアンケートだけの場合は、手間もかからないため、簡単に数を多くすることもできます。

臨床試験の内容が重要。

被験者の免疫が上がったかどうかを確認する指標としては、以下のものがあげられます。



NK活性
血中から取り出したナチュラルキラー細胞が、どれだけガン細胞を殺せるか。その能力を直接的に測定します。

IFNの血中濃度
IFN(インターフェロン)とは、免疫細胞同士の情報伝達物質であり、免疫が活性化していることを間接的に測定します。

免疫細胞(樹状細胞、T細胞、NKT細胞)の数
免疫細胞が増えていることを確認することで、免疫が活性化していることを間接的に測定します。

QOL(患者へのアンケート)
QOL(生活の質)に関するアンケートを実施し、効果を間接的に確認します。お金も手間もかからず簡単に実施できます。患者の主観的要素が大きい。



上記の中で、最も結果を出すのが難しいのは、NK活性と言えます。NK活性は、免疫力を最もダイレクト(直接的)に測定するものであり、被験者のストレス状況などにより大きな影響を受けます。そのため、実際に測定しても、はっきりとした効果を出すのが難しくなります。

NK活性 > IFN > QOL
NK活性 > IFN > QOL

価値のある臨床試験とは?

評価の難しいNK活性で統計学的に意味のある結果を出せている臨床試験は価値があります。NK活性で評価が難しい場合に、代替案として他の評価方法があるとも言えます。

まとめ

結局、「α-グルカンとβ-グルカンのどちらがいいのか」という分類をすること自体に意味が無いとも言えます。

成分の効果において、「α-グルカンなのか、β-グルカンなのか」が重要なのではなく、「購入を検討している商品同士の科学的根拠を比較すること」の方が重要ではないでしょうか。

どんな分類であろうと、臨床試験で免疫を本当に上げれるものが効果のある成分であり、結果を出せないものは効果の無いものです。安全性に関しても同様です。

臨床試験も、10名程度のものよりも、100名ほどの大規模な試験で得られたデータの方がより信頼できると言えます。また、試験内容も、効果を間接的に評価するものではなく、直接的に評価するものの方がより科学的根拠は強くなり選ぶ価値も高くなります。

もちろん、得られたデータが統計学的にも意味があり、公にも信頼できる機関で評価を受けているのかも重要なポイントになります。