レンチナンとは。
レンチナンは、担子菌類のシイタケから抽出・精製されたβ-グルカンで、各種の消化器癌、特に胃癌に対する抗悪性腫瘍剤として静脈注射にて用いられています。
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第一章|β-グルカンのすべて
4. β-1,3-1,6-グルカンの生理活性
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レンチナンは、担子菌類のシイタケから抽出・精製されたβ-グルカンで、各種の消化器癌、特に胃癌に対する抗悪性腫瘍剤として静脈注射にて用いられています。
癌に関する効果としては、抗腫瘍活性の他に、転移抑制効果や化学発癌(発がん性物質由来の癌)やウィルス発癌を強く抑制することが報告されています。さらに、感染症に対しても、細菌感染の治療、ウィルス感染の治療、寄生虫の殺卵効果などが報告されています。
高度に精製されたβ-グルカンであり、物理的・化学的に厳密に特徴付けられている点があげられます。
上図に示すように、β-1,3-結合で連結されたグルコースを主鎖にもち、そのグルコース残基5個に2個の割合でβ-1,6-結合にてグルコース1分子からなる分岐が存在するβ-1,3-1,6-グルカンです。
分子量は40~80万、高次構造として3重らせん構造をもちます。
一般の構造式が、どの原子とどの原子が結合しているのかを平面で表しているのに対し、高次構造は各原子の位置を3次元の立体構造で表しています。簡単にいうと、家の設計図と実際に組み立ててできた家の関係と言えます。
高次構造は分子の大きさ、分子同士の引き合う力などに影響され、多糖が実際に存在している形を示しています。
分子のカタチは、生体内における反応において非常に重要な因子であることから、β-グルカンの生理活性発現のためには、設計図ではなく、実際に出来上がったカタチである高次構造が重要であると考えられました。
レンチナンは、グルコースがいくつも鎖状につながった鎖(くさり)のようなものです。鎖の一本一本は、独立して存在しているのではなく、3本の鎖が互いに絡まり合い、3重らせん立体構造を形成しています。
この3重らせん構造を上部から見た場合、以下のような三角形様のカタチをしています。
赤、青、黄の色分けは、絡み合った3本らせんの一本一本を意味しています。
レンチナンと類似構造をもつパキマンという物質があります。パキマンは、3重らせん構造がほどけたランダムコイルという高次構造をしています。
レンチナンもパキマンも同じβ-1,3-1,6-グルカンです。しかし、3重らせん構造をもつレンチナンには抗腫瘍活性がありますが、3重らせん構造をとらないパキマンには活性がありません。
レンチナン | パキマン | |
構造式 | β-1,3-1,6 | β-1,3-1,6 |
高次構造 | 3重らせん構造 | ランダムコイル |
抗腫瘍活性 | あり | なし |
一方、パキマンの側鎖のβ-1,6-結合を切断したβ-1,3-グルカンであるパキマランや、パキマンを尿素と共に熱して高次構造を復元したU-パキマンなどは3重らせん構造を示し、レンチナンと同じく抗腫瘍活性をもちます。
パキマラン | U-パキマン | |
構造式 | β-1,3 | β-1,3-1,6 |
高次構造 | 3重らせん構造 | 3重らせん構造 |
抗腫瘍活性 | あり | あり |
β-1,3-1,6-グルカンであっても、3重らせん構造をとれなければ活性はなく、β-1,3-グルカンでも3重らせん構造をもつなら活性があるという結果から2つのことが導き出されます。
①構造式は必ずしも活性をもたらす要因ではない。
②活性をもたらすには高次構造が必要となる。
つまり、β-グルカンにおいて活性を出すには、いかに立体構造(カタチ)が重要であるかを物語っています。