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Column 0056 | 2019.08.10

乳がんの手術後の抗がん剤は、した方がいい?損をする?

乳がん(ピンクリボン)
乳がん(ピンクリボン)

乳がんの術後に、ガンの再発を予防する目的で、抗がん剤をすることがあります。実は、抗がん剤をすることで損をする人は、計算上は90%程度になることもあります。



なぜ、術後に抗がん剤が必要か?


乳がんの場合、もし遠隔転移した場合の根治は不可能であるとも言われています。そのため、術後の抗がん剤によって、体内に残っているガン細胞をしっかり殺しておくことで再発を予防します。

乳がんが再発するかどうかは、様々な要因(リンパ節転移、ホルモン受容体、腫瘍の大きさ、組織学的グレード、年齢、HER-2、脈管浸襲など)が影響するため、人によって再発率は異なります。

例えば、リンパ節転移が無く、腫瘍の大きさが3cm以上の場合の10年遠隔再発率は20~50%ともいわれ、術後に抗がん剤などの補助治療を行えば、再発率が1/4に改善するとも言われています。


抗がん剤で得をするのは、全体の10%程度?


未来は誰にも分らないため、抗がん剤をした方がいいのかどうかは断定はできません。

しかし、計算によって、抗がん剤をした方が得をするのか、損をするのかをある程度予想することはできます。

もし、再発率が20%の場合、抗がん剤により1/4の再発を予防できたとすると、



抗がん剤をして得した人
20% × 1/4 = 5%

抗がん剤で損した人
100% - 5% = 95%



同様の計算により、再発率が50%の場合は、得をする人(12.5%)、損をする人(87.5%)となります。

つまり、5 ~ 12.5%の人は再発を予防できるため得をしますが、残りの人は、つらい抗がん剤の副作用に耐えたことがムダになるため損をするということになります。


抗がん剤で、妊娠できなくなる?


抗がん剤の種類や、使用する組み合わせ、患者の年齢などにより妊娠できなくなる確率は変動します。

例えば、30代の場合、不妊の確率が30 ~ 40%でも、40代であれば、80 ~ 95%になるとも言われています。

妊娠をこれからしたいと思っている女性にとっては、大きなデメリットであると言えます。


まとめ


自身の乳がんの再発率や、検討中の抗がん剤を使用した時の再発予防の改善率などから、抗がん剤をした方が得なのか損なのかを計算してみるのも一つの判断材料になるのかもしれません。

人によって多様な選択肢があります。



しない
得する割合が1割程度だから、つらい抗がん剤は使用しない。

しない
不妊になる割合が50%以上あるのなら、抗がん剤はしない。

する
子供を産む予定はないので、損するかもしれなくても抗がん剤はする。

など



いずれにしても、様々な情報を自分の価値観の天秤にかけ、納得のいく選択をするべきであると言えます。

また、抗がん剤をしてもしなくても、術後に免疫力を上げるために生活習慣を変えることは大切なことです。

なぜなら、免疫力の低下が根本原因であるため、術後も変わらず免疫力の低下する生活を続けていれば、遅かれ早かれ再発を許してしまうからです。

特に術後の一年間程度は油断しないことが大切ではないでしょうか。


Column 0056 | 2019.08.10