なぜ、この3つの成分に絞ったのか?
日本には、乳酸菌、LPS、β-グルカン以外にも、様々な健康成分は存在します。しかし、毎年の世界での発表論文数で比較すると乳酸菌、LPS、グルカンが多いため、この3つの成分を取り上げています。
免疫サプリメントはたくさんありますが、その中でも、乳酸菌とLPS、β-グルカンが一体何が違うのかを解説します。
―
日本には、乳酸菌、LPS、β-グルカン以外にも、様々な健康成分は存在します。しかし、毎年の世界での発表論文数で比較すると乳酸菌、LPS、グルカンが多いため、この3つの成分を取り上げています。
※論文数が多いから単純に優れているというわけではありません。
※PubMedにおいてで検索ヒットする論文数を意味しています。PubMed(パブメド)とは、アメリカ国立医学図書館の国立生物工学情報センター(NCBI)が運営する医学・生物学分野の学術文献検索サービスです。
成分に効果があると言われていても、実際の商品がヒトで本当に効果を発揮できるのかどうかは、全く別の話になります。
ただ単に成分が入っているだけの商品もあれば、薬にするための試験と同等レベルの評価試験に合格しているものもあります。健康食品から機能性食品、薬と機能性食品の間に位置するものまであります。
安全性に関しても、天然だから安全だと謳われているものから、厚生労働省が実際に商品を使って安全性を評価しているものまであります。
つまり、商品の機能性や安全性に関しては、「この成分であるから安全である」とか、「この成分だから効果が高い」というように、異なる成分同士を単純に比較することはできません。
機能性や安全性については一旦置いておいて、大きく何が違うのかということを以下に述べます。
乳酸菌も、LPSも、β-グルカンも成分が異なるだけで、免疫が上がる基本的なメカニズムは同じです。
例えば、風邪のウィルスや、O-157(病原性大腸菌)などの病原体がカラダに入ると、それに対処しようとして自然に免疫系が活性化されます。カラダは自身の免疫系を強くして病原体を排除しようとします。
つまり、乳酸菌やLPS、β-グルカンは、カラダにとって病原体として認識されるため免疫系が活性化されます。
病原体は、カラダのあらゆる細胞(のどの粘膜の細胞や、腸管上皮の細胞、免疫細胞など)に接触すると認識されます。病原体表面の突起物の形状で病原体かどうかを判断しています。
病原体は、ウィルスから細菌まで様々なものがありますが、その表面は病原体の種類に応じてそれぞれ特有の形状をしています。
病原体に特徴的な立体的分子パターンをPAMPsと言います。世の中には、様々な病原体が存在するためPAMPsも山のように存在します。
PAMPs(Pathogen associated molecular patterns:病原体関連分子パターン)としては、細菌由来のリポタンパク質や、リポ多糖(LPS)、ペプチドグルカン(PGN)、リポアラビノマンナン(LAP)、リポタイコ酸(LTA)などがあります。
カラダのあらゆる細胞の表面には、病原体の突起物(PAMPs)を認識できる受容体がいくつもあります。
人間の細胞は、あらゆる病原体に対応できるように、受容体をたくさん持っています。この受容体を総称してPRRsと言います。
PRRs(Pattern recognition receptors:パターン認識受容体)としては、 TLR(トールライクレセプター:トル様受容体)、Dectin1(デクチンワン)、CR3(シーアールスリー)などが報告されています。
乳酸菌は、グラム陽性菌です。その表面の細胞壁にはペプチドグリカンやリポタイコ酸といったPAMPsが存在します。
このようなPAMPsを、体内の腸管上皮細胞や、様々な免疫細胞が病原体として認識し、免疫系を活性化しています。
ペプチドグリカンやリポタイコ酸は、TLR-2という受容体(PRRs)で認識されます。
LPS(リポ多糖)とは、グラム陰性菌の細胞外膜にある突起物のことです。
このLPS(リポ多糖)をカラダの細胞はPAMPsとして認識し、免疫系を活性化させます。
乳酸菌の場合は、菌そのものをカラダに入れます。一方、LPSの場合は、菌を殺菌してPAMPsであるLPS(リポ多糖)を抽出し、そのPAMPsだけをカラダに入れます。
カラダの細胞は、PAMPsしか認識していないため、乳酸菌のように菌をカラダに入れなくても免疫系を活性化させることができます。
LPS(リポ多糖)は、TLR-4という受容体(PRRs)により認識されます。
β-グルカンはブドウ糖でできた食物繊維ですが、ただの食物繊維ではなく、その立体構造が、真菌(カビ)のPAMPsによく似たカタチをしています。
LPSと同様に、カラダの細胞はPAMPsしか認識していないため、菌をカラダに入れることなく免疫系は活性化されます。さらに、食物繊維でできているため、より高い将来の安全性を確保できます。
β-グルカンは、TLR-4という受容体(PRRs)により認識されます。
三者の違いは、
・乳酸菌
菌そのもの。
・LPS
カラダの細胞が病原体と認識しているパーツ(PAMPs)を菌から抽出したもの。菌自体をカラダに入れなくていい。
・βグルカン
菌のPAMPsによく似た立体構造をもつ食物繊維。カラダに菌を入れなくていい + より安全。
ー
どれも、病原体がカラダに入った時と同じような反応が起こります。それにより免疫系が活性化されます。
では、どれも活性化されるなら、どれを選んでもいいのかという話になります。
確かに、少し免疫を上げたいのなら、どれでも良いのかもしれません。しかし、例えば、治療の目的で免疫を大きく上げなければならない場合、長期的な多量摂取が必要になります。
その場合は、どうなるかわからない健康被害リスクを避けるために、人間が日常的に多く摂取しているものを選んでおいた方が良いと言えます。
乳酸菌(醤油、お酢、漬物、納豆などに含まれる)も、LPS(野菜、果物の表面に付着している)も日常的にカラダに入るものですが、食物繊維のβ-グルカンに比べれば圧倒的に量が少なくなります。
つまり、多量摂取する場合は、β-グルカンがより望ましいと言えます。(※ただし、β-グルカンと言っても、商品により安全性は全く異なるため注意が必要です。)
Column 027 | 2019.06.20