TOP > コラム > Column 013


オプジーボ(チェックポイント阻害剤)とは?

オプジーボ(チェックポイント阻害剤)
オプジーボ(チェックポイント阻害剤)

はじめに。

オプジーボ(チェックポイント阻害剤)がよくわからない人のために、わかりやすく(でも詳しく)解説します。


オプジーボとは。

オプジーボ(チェックポイント阻害剤)とは、ノーベル賞を受賞した研究(PD-L1とPD-1)を利用した薬剤です。

簡単に言えば、がん細胞により抑制される免疫細胞の力を解放するものです。よく言えば解放ですが、免疫細胞の暴走を防ぐために備わっている安全装置を解除するものとも言えます。


かんたんオプジーボ劇場(PD-L1とは?)

組織の細胞(市民)と免疫細胞(警察と軍隊)と病原体(侵入者)
組織の細胞(市民)と免疫細胞(警察と軍隊)と病原体(侵入者)
組織の細胞(市民)と病原体(侵入者)
組織の細胞(市民)と病原体(侵入者)

①体内に侵入した病原体(ウィルスや細菌などの侵入者)をカラダの様々な組織の細胞(市民)が見つけると、免疫細胞(警察や軍隊)に助けを求めます。

組織の細胞(市民)と免疫細胞(警察と軍隊)と病原体(侵入者)
組織の細胞(市民)と免疫細胞(警察と軍隊)と病原体(侵入者)

②組織の細胞(市民)からの要請を受けて到着した免疫細胞(警察や軍隊)が病原体(侵入者)を攻撃・除去します。

組織の細胞(市民)と免疫細胞(警察と軍隊)とPD-L1
組織の細胞(市民)と免疫細胞(警察と軍隊)とPD-L1

PD-L1とは、撤退指示書類。

免疫細胞に現場の病原体を倒してもらった後は、もう免疫細胞の役目は終わりです。しかし、免疫細胞(警察や軍隊)は一般細胞(市民)からの撤退指示書類(PD-L1)を受け取らなければ、攻撃をし続けます。

組織の細胞(市民)と免疫細胞(警察と軍隊)とPD-L1
組織の細胞(市民)と免疫細胞(警察と軍隊)とPD-L1

PD-L1を認識すると免疫細胞は撤退する。

組織の細胞は撤退指示物質であるPD-L1を細胞の表面に出します。 PD-L1が免疫細胞の表面にあるPD-1で認識されることで、免疫細胞は撤退していきます。


PD-1は免疫細胞の暴走を止める安全装置。

免疫細胞(警察や軍隊)の攻撃力や破壊力は凄まじく、病原体をすでに殺しているのに、そのまま戦いを続けられれば一般細胞(市民)までも被害(誤射や誤爆)を受け殺されてしまいます。それを阻止するための安全装置がPD-1です。


PD-L1を利用しているのが、ガン細胞。


ガン細胞は、PD-L1をもっている。

本来は、PD-L1(撤退指示書類)は組織の細胞(市民)しか持っていないものです。しかし、ガン細胞は市民が犯罪者になったものであり、もともとは市民なのでPD-L1を所持しています。

組織の細胞(市民)とガン細胞(犯罪者)
組織の細胞(市民)とガン細胞(犯罪者)

ガン細胞は、免疫細胞を撤退させる。

ガン細胞(犯罪者)は組織の細胞(市民)と同じようにPD-L1(撤退指示書類)を使うため、免疫細胞(警察や軍隊)はその指示通りに帰らさせられます。これによりガン細胞は免疫細胞の攻撃を回避します。

免疫細胞(警察と軍隊)とガン細胞(犯罪者)
免疫細胞(警察と軍隊)とガン細胞(犯罪者)


オプジーボは、撤退指示を無効化する。

オプジーボ(チェックポイント阻害剤)
オプジーボ(チェックポイント阻害剤)

オプジーボはPD-1にくっつく。

オプジーボがPD-1に結合することで、PD-L1(撤退指示書類)がPD-1(撤退指示認識装置)にはまるのを邪魔(阻害)します。

オプジーボ(チェックポイント阻害剤)の仕組み(メカニズム)
オプジーボ(チェックポイント阻害剤)の仕組み(メカニズム)

免疫細胞は撤退せずにガン細胞をやっつけれる。

これまではガン細胞(犯罪者)からの撤退指示(PD-L1)を受けて帰らされていた免疫細胞(警察や軍隊)も、オプジーボのおかげで撤退することなく本来の力を発揮できるということになります。

免疫細胞(警察と軍隊)とガン細胞(犯罪者)
免疫細胞(警察と軍隊)とガン細胞(犯罪者)


オプジーボの問題点。


免疫細胞が攻撃を止めてくれない。

オプジーボで免疫細胞(警察や軍隊)の耳(PD-1)がふさがれているため、市民からの撤退指示(PD-L1)は届きません。この免疫細胞の暴走によって起こるのが各種の副作用です。

免疫細胞(警察と軍隊)とガン細胞(犯罪者)
免疫細胞(警察と軍隊)とガン細胞(犯罪者)

本来は免疫細胞(警察や軍隊)の暴走を防ぐための安全装置(PD-1)を無効化することで有益な状況を作るため問題が起きます。


副作用で最悪は死ぬことがある。

免疫が暴走したくらいでヒトが死ぬわけがないと思う方もいるかもしれません。しかし、免疫とは病原体に対する人体の最終兵器であり、安全装置(PD-1)が付いていることからもわかるように、それだけの破壊力を持っています。

ちなみに、1918年に全世界的に流行したスペイン風邪は当時の全人類の約3割の死亡者を出しましたが、そこまで被害が拡大したのは免疫の過剰反応によるものであるとも考えられています。

このような免疫の過剰反応をサイトカインストームと言います。


人によっては効かないことがある。

ガン細胞からの撤退指示を無効化したとしても、そのガン細胞を攻撃する免疫細胞の数が少なかったり、免疫細胞の活性が低かったり、患者の免疫系自体が弱っていれば期待した効果が出ないということもあります。

弱った免疫細胞(警察と軍隊)
弱った免疫細胞(警察と軍隊)

カラダの免疫系が慢性的に弱ることによって人はガンになるため、そもそも多くの患者の免疫系は弱った状態です。


高額な価格。年間750万かかる。

以前は年間3000万ともいわれていましたが、現在は価格は引き下げられ約4分の1にまで下がっています。今後も変動する可能性はありますが、いずれにしても高額な薬剤と言えます。

オプジーボ 100 mgで 173,768 円。1回に 3 mg/kgを2週間に1回使用します。例えば、60kgの体重の人であれば、360 mg/月となり、月の金額は、62万5564円になります。


自分の力であって、自分の力ではない。

カラダの免疫系の力でガンを攻撃させますが、それは薬で強制的に手に入れた力です。患者本来の力ではないため、薬で一時的に問題が解決したとしても再発する可能性はあります。


まとめ


他の薬と全く違うのか。

オプジーボは、ガン細胞により抑制されている免疫細胞を解放(暴走)させることで治療への効果を期待するものであり、従来の抗がん剤などとは異なる仕組みであると言えます。

しかし、カラダの秩序を強制的に変えて有益な状況を作り出すという概念は、他の薬と何ら変わりはありません。強制的にカラダのシステムを変えれば問題(副作用)が生じることは避けられません。


使うべきか、使わないべきか。

つらい副作用や、死ぬかもしれないリスクはあるけれども、劇的に効果を発揮して一命を通り止めることができる可能性もあります。諸刃の剣であることを十分に理解して使用するものであると言えます。


オプジーボを使わないとガンを倒せないのか。

「ガン細胞が免疫細胞を撤退させるから、ガンを倒せない」というのが今回の話のポイントです。この理論では、免疫細胞は一つもガン細胞を倒せないということになります。

しかし、毎日生まれているガン細胞をしっかりと除去できているからこそガンにならない人がいます。ガン細胞が免疫細胞を撤退させたとしても、それを回避しガン細胞を倒すことのできるシステム(まだ解明されていないものも含む)は必ず存在します。


結局は、自分で治さなければならない。

先天的なものなどの特別な理由がなければ、ガンは自分自身の生活習慣によって作られるものです。本来、ガンを治すということは、弱り切った免疫力を、ガンを抑え込めるだけの元の元気な状態に戻すことです。

手術で切除したり、抗がん剤を使ったり、今回のオプジーボというのは、自分自身の力で治せなかった時や、猶予がない時に一命を取り留めるために使用するものです。ガンの根本原因を解決せずに、自分の力以外のものに頼ろうとすれば、ガンは再発もしてしまいます。

また、自分の力で問題を解決しようとせずに、まだ全てが解明されていないカラダをいじればいじるほど状態は悪くなります。例えば、パソコンの調子が悪い時に修理を頼むのはパソコンの専門家のはずです。なぜなら、下手に触れば触るほど逆に壊れてしまうからです。カラダの場合は、専門家はカラダ自身です。つまり、多少はカラダをいじってもいいけれど、本来はできるだけカラダにまかせることが最善の方法であると言えます。


免疫を高めるのに特別なことは必要ない。

運動・食事・睡眠の正しいサイクルとストレスの発散、適度に病原体に接触することによって自然に免疫力は高まるようにカラダはできています。

免疫系は、人間が自然の中で生活することを前提として進化してきたものです。つまり、自然界での生活からズレればズレるほど、免疫力は低くなるようにできているとも言えます。

運動不足、睡眠不足、ストレス過多というように現代人の生活は自然界との生活から大きくずれ、免疫力も低下気味です。必要なのは、日々の生活をできるだけ人間本来の自然な状態に戻すことです。


サプリメントは飲んだ方がいいのか。

お金に余裕があれば、免疫をサポートするサプリメント(信頼できるもの)を飲用することは有効な手段です。

なぜなら、生活習慣を変えることやストレスを発散することは非常に難しいということと、免疫では間に合わないことがあるからです。ガンを克服するためには、ガン細胞が増殖する数よりも免疫細胞が倒すガン細胞の数の方が上回らなければなりません。上回った状況が継続することでガン細胞は減っていきます。

つまり、どんどんガン細胞が増え続ける状況をひっくり返すほどの爆発的なパワーが必要になります。そのためにサプリメントで免疫をサポートするということになります。

もし、サプリメントを使用するのであれば、3ヶ月程度の区切りをつけて短期決戦で臨むことが重要です。ガンは時間が経てば経つほど大きくなるため、できるだけ小さなうちに状況をひっくり返さなければなりません。そのため、少量を長期間(例えば一年)飲むよりも、多量摂取で短期間(例えば3ヶ月)飲む方が効果を期待できます。