はじめに。
インフルエンザの予防や対策としては、マスクやうがい、ワクチンなどがあげられますが、一番大切なことはカラダの免疫(病気から守る力)を下げさせないこと。これが最も有効な対策になります。
インフルエンザの予防や対策としては、マスクやうがい、ワクチンなどがあげられますが、一番大切なことはカラダの免疫(病気から守る力)を下げさせないこと。これが最も有効な対策になります。
インフルエンザウィルスによって引き起こされる感染症です。世界中で毎年繰り返し流行しています。日本においては、例年12月から3月に流行します。
免疫力が低くなるほど、インフルエンザにかかりやすくなる。
インフルエンザの入院患者数は、20代で最も低く、子どもや高齢者で増える傾向があります。免疫との相関関係が如実に表れています。
ウィルスや細菌などの病原体からカラダを守ってくれる免疫(NK活性)は、20代をピークに年齢とともに低下します。そのため、免疫力の低い子供や、高齢者はインフルエンザにかかりやすい傾向があります。
NK活性とは、がん細胞を攻撃・除去する免疫細胞の力の指標となる数値であり、様々な病原体(ウィルスや細菌)と闘うための力を意味しています。
基幹定点医療機関(約500カ所)からのインフルエンザによる入院患者の届出数
厚生労働省 報道関係者向け インフルエンザ発生状況 平成26年分より
体内にインフルエンザのウィルスが侵入したとしても、免疫が守ってくれています。20代は比較的免疫が高いため、インフルエンザの入院患者数も少なくなります。
しかし、ウィルスを攻撃する免疫力が低いとインフルエンザにかかりやすくなりますし、病気を治す力が弱いので、治るまでに時間もかかります。
免疫の育ち切っていない子供や、加齢で免疫の低下している高齢者がインフルエンザになりやすいのはそのためです。
マスクは効果があるのか?
そもそもウィルスは非常に小さく、ウィルスの50倍もの大きさのマスクの穴は簡単に通り抜けることができます。
ウィルスの侵入は目、鼻、口などの粘膜から侵入するため、マスクでは侵入を防ぐこと自体が不可能であると言えます。
ウィルスは湿気に弱く、水分が多いと生存時間が短くなります。そのため口や鼻の周りを加湿しておくことで、マスクを通り抜けたウィルスを弱らせることが目的とも言われています。
ただし十分な予防効果の科学的根拠はありません(プラシーボ的な効果もあります)。
もう一つの理由は、自分を守るのではなく周囲の人を守ること(エチケット)です。咳きやくしゃみなどで飛び散る飛沫(微細な水分)にはウィルスも含まれているため、それが相手の目や鼻、口に付着することを防ぐことが目的です。
ただし、5μm以上の大きな飛沫の場合はマスクでとらえることができても、それよりも小さな飛沫はマスクをすり抜けることができます。
また飛沫はずっと空気中を浮遊しているわけではなく、1~2mほど飛んで落下するため、至近距離で直接的に咳きやくしゃみを浴びることがなければ、マスクをしていてもしていなくても同じと言えます。
WHO(世界保健機関)では、インフルエンザの感染予防においてマスクやうがいを推奨はしていません。
日本ではインフルエンザの流行する季節や風邪を引いた時にマスクをすることが当たり前ですが、意外に海外ではほとんどの人はマスクをしていません。
海外では日常的にマスクをしている人が少ないため、むしろ海外でマスクをしていると、もっと危険な病気をもっていると思われて避けられることがあります。
マスク自体に感染予防に対する大きな効果を期待できないからWHO(世界保健機関)においても推奨されていないとも言えます。
ただし、マスクをする文化のある日本においては、もし咳きやくしゃみが出るのであればマスクをしておいた方が良いと言えます。
マスクをしていても、ウィルスは通り抜けますし、マスクの穴よりも小さな飛沫は通り抜けます。咳きやくしゃみも至近距離(1~2m程度)で浴びなければ本来は問題はありません。
日本人のすべての人が上記のような正確な知識を持っていれば、マスクをしていなくても問題はありませんが、咳きやくしゃみでうつると思っている人からすればマスクをしていないことを不快に感じる人もいるかもしれません。
本当に正しいことでも、特定の集団の中で正しくないこととしてとらえられることもあります。
うがいは効果があるのか?
ウィルスが口やのどの粘膜に付着してから細胞内に侵入するのに20分程度しかかからない。
うがいをすることで粘膜に付着したウィルスを除去できたとしても、20分あればウィルスは細胞に侵入できるため、日常生活において、うがいを20分おきにし続けない限り、うがいでウィルスの侵入を防ぐことはできないと言えます。
とても現実的な対策ではありません。
首相官邸の公式ホームページでは、「 うがいは、一般的な風邪などを予防する効果があるといわれていますが、インフルエンザを予防する効果については科学的に証明されていません。」と記載されています。
ワクチンは効果があるのか?
インフルエンザのウィルスを弱らせたもの(ワクチン)をカラダに注射します。すると、カラダの免疫系がそのウィルスに対する抗体(ウィルスを攻撃するもの)を作ります。
そのため、同じウィルスが体内に侵入した際には、事前に作られている抗体によってウィルスを攻撃・除去できるため、インフルエンザにかかりにくくなるという仕組みです。
必ずかからないというわけではなく、あくまでも感染予防を期待できるというものです。
接種させたワクチン(弱らせたウィルス)と全く同じウィルスであれば効果を発揮しますが、少しでも違うと効果を発揮しません。
ワクチンは打っても打たなくても同じという見解の医師もいますが、その理由は上記からきていると言えます。
免疫系は、病原体(ウィルスや細菌)を攻撃する力をもちますが、その力は非常に強力なものであり間違って自分の正常な細胞を攻撃してしまうと、人体を死に至らしめるほどの破壊力を持ちます。
1918年~1919年に全人類の約3割が感染したインフルエンザのスペイン風邪(感染者5億人、死者5000~1億人)は、免疫の過剰反応(サイトカインストーム)によって死亡者数が極めて多かったと考えられています。
そのためワクチンにより作られる抗体(病原体を攻撃するもの)も、確実に病原体のみを攻撃できるように非常に特異的に病原体を識別できるようになっています。
少しでもウィルスの形が違えば、攻撃対象にはなりません。この免疫系の仕組みを逆手にとって、ウィルスは自身の形状を常に少しだけ変化させます。
ウィルスの表面に飛び出したタンパク質のうち、重要なタンパク質であるヘマグルチニン(H1~H16の16種類)と、ノイラミニダーゼ(N1~N9の9種類)の組み合わせによって、A型インフルエンザウイルスは144通りの亜型に分類されます。現在、全144通りのうち126種類までが確認されています。
つまり、事前に予防接種したワクチン(弱らせたウィルス)と全く同じウィルスでなければ効果が発揮されません。
予防接種は、その年に流行しそうなインフルエンザウィルスを予想して、そのウィルスを事前に注射しますが、その予想が外れた時は効果が無いと言えます。
また、A型インフルエンザだけでも、現在推測される144通りのウィルスパターンのうち確認されているのは126種類ですが、それらすべてのワクチンを打ったとしても、対応できるのはその126種類であり、別の形状の新型ウィルスが現れた場合はワクチンでは対応できないと言えます。
一番のインフルエンザ対策は、手洗いと免疫力を高めておくこと。
帰宅時や、調理の前後、食事前などの手洗いが有効です。飛沫や接触感染のリスクの高い手を洗うことで、感染リスクを軽減することが期待できます。
日常生活においてウィルスが侵入することを防ぐこと自体には限界があります。しかし、もし体内にウィルスが侵入しても、免疫系でウィルスの増殖を抑えることができれば感染を防ぐことができます。
免疫力の高め方。
免疫系を高めることに必要なことは特別なことではありません。運動・食事・睡眠の正しいサイクルを送ることで自然に免疫系は高まるように人間のカラダはできています。
逆に、仕事が忙しかったり、残業続きで生活習慣が乱れてくると免疫力が低下し、インフルエンザに感染するリスクも高くなります。
免疫系は生活習慣の乱れだけでなく、ストレスによっても大きく低下します。人間関係や仕事のストレスなどで免疫力が低下しているとインフルエンザに感染するリスクは非常に高くなります。
現代社会においてストレスのない生活を送ることは非常に難しいことですが、できるだけストレスを発散したり、ストレスを溜めないように心がけることが大切です。
適度にウィルスに接触し、免疫を作ることも大切。
免疫系は、人間が自然の中で生き抜くために進化させてきたシステムです。不衛生な自然界の中で生活していれば、自然に多くのウィルスや細菌に接触し、それに応じた免疫が形成されます。
つまり、本来人間は、自然の中で生活すればするほど病原体(ウィルスや細菌)に対して強くなるようにできています。
病気にならないように病原体(ウィルスや細菌)を避けることも大切なことですが、それでは免疫系が作られず、いつまでも避け続けなければなりません。
適度にウィルスに接触し自分で乗り越えられる力を身に着けていくことも大切なことです。
多くのウィルスに接触する機会の多い小児科のお医者様が以外に風邪を引いたりしないのも、たくさんのウィルスに対する免疫ができているからかもしれません。