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Column 004

生まれた時は、みんなアレルギー体質?

子どもをアレルギーにさせない
子どもをアレルギーにさせない

Introduction -導入-

喘息、花粉症、食物アレルギーなどのアレルギー疾患の罹患率は、先進国を中心として増加傾向にあり、現在の日本では、小児の約3割が何らかのアレルギー疾患になっています。

アレルギーの原因は、免疫の制御システムのアンバランスであると考えられています。しかし、私たち自身の清潔すぎる生活環境が、子どもをアレルギーにしてしまっている可能性もあります。ここでは、子どものアレルギーを、免疫(Th1/Th2バランス・衛生仮説)の観点から考察していきます。

アレルギーを引き起こす免疫系とは?

アレルギーの原因は、免疫の過剰反応だということを知っている人も多いと思います。しかし、人間の免疫系は複雑で、その中でも特定の免疫機構がアレルギーに関与していることをご存知でしょうか。

人間の免疫系には、自然免疫と獲得免疫の2つあり、アレルギーの原因となる免疫の過剰反応とは、獲得免疫における液性免疫(Th2)の異常な反応であると考えられています。

自然免疫と獲得免疫(Th1/Th2)
自然免疫と獲得免疫(Th1/Th2)

※Thとは、ヘルパーT細胞の頭文字を意味しています。

つまり、「免疫力の過剰反応」とは、単純に「免疫力が強い」という意味合いではありません。アレルギーの人は、正常な人とは異なり、その異常な体質により、おかしくなった免疫が過剰に反応しているだけではないかと考えられています。

免疫システムのTh1とTh2とは?

人間の免疫は、第一防衛ラインは自然免疫ですが、自然免疫で問題を解決できない場合に、より強力な獲得免疫という免疫で対処します。獲得免疫とは、一度戦った敵(病原体や異常細胞など)の情報を記憶し、二度目の戦いを有利に運べるように進化していく免疫とも言えます。

さらに、獲得免疫には、細胞性免疫(Th1)と液性免疫(Th2)の2形態あります。病原体の種類や状況により、戦闘形態を変えながら、最も効率的に病原体を無効化・除去できるようになっています。

細胞性免疫(Th1)と液性免疫(Th2)
細胞性免疫(Th1)と液性免疫(Th2)

細胞性免疫(Th1)とは
Th1細胞により誘導される免疫系で、マクロファージやキラーT細胞(CTL)、NK細胞を活性化させることで、液性免疫(Th2)では除去できない病原体(細胞内に逃げる病原体)を攻撃・除去するための戦闘形態です。様々な免疫細胞が関与していることから細胞性免疫と呼ばれます。例えば、癌細胞は、この細胞性免疫(Th1)により除去されます。

液性免疫(Th2)とは
Th2細胞により誘導される免疫系で、B細胞に抗体を作らせ、血液中の病原体(細胞内に逃げ込まない細菌や寄生虫など)を一掃することから、液性免疫と呼ばれます。花粉症の人は、この液性免疫(Th2)が過剰に反応することでアレルギー症状を引き起こしています。

Th1/Th2バランスとは?

カラダは病原体を除去するために、細胞性免疫(Th1)と液性免疫(Th2)という異なる戦術を使い分けています。展開している一方の戦術に集中するため、片方が活性化されているときは、もう片方の機能は弱くなるようになっています。まるでシーソーのようにバランスをとっているため、Th1/Th2バランスとも呼ばれます。

Th1/Th2バランス
Th1/Th2バランス

Th1が強く、Th2が弱い場合は、「Th1優位な状態」といい、その逆に、Th1が弱く、Th2が強い場合は、「Th2優位な状態」と言われます。

Th1/Th2の考え方は、免疫にかかわる最も重要な項目の一つです。アレルギーや自己免疫疾患などの多くの現象が、このTh1/Th2バランスにより説明されています。

免疫のバランスが崩れるから、問題が起きている?

Th1/Th2バランスは、病原体の排除が終われば、自然に平衡状態に戻ると考えられています。Th1/Th2バランスが元に戻らないままであると、様々な問題が発生します。

アレルギーと正常な人のTh1/Th2バランス
アレルギーと正常な人のTh1/Th2バランス

例えば、花粉症(アレルギー)の人は、Th2優位な状態になっており、Th2が過剰に反応することでアレルギー反応を引き起こしていると言われています。

生まれる前から、免疫のバランスは崩れている?

免疫とは自分以外のものを攻撃・除去するためにカラダに備わっているシステムです。

妊娠中の母親にとって、胎児というのは自分以外のものであるため、免疫にとっては攻撃・除去対象となるものです。逆に胎児にとっても、母親は攻撃・除去の対象となりうるものです。

母親と胎児のTh1/Th2バランス
母親と胎児のTh1/Th2バランス

母親も胎児もお互いに、免疫的排除を避けるために、妊娠中は免疫が抑制されています。具体的には、Th1が抑制されており、Th2優位な状態に自然となっています。

「Th2優位な状態」とは、アレルギーの人と同じ状態であり、私たちは生まれる前からすでに免疫のバランスが崩れているとも言えます。



なぜ、母親と胎児は免疫バランスが崩れているのに問題ないのか?

免疫のバランスが崩れていたとしても、胎児の場合は、母親のお腹の中で守られているため、アレルギー物質に接触することも無く、アレルギー症状を引き起こす問題も無いと言えます。

母親の場合は、日常的にアレルギー物質に接触するためアレルギーが起きやすいと思われますが、実際には妊娠中にアレルギー症状を発症する人はほとんどいません。

母親の免疫バランスは崩れていますが、それはカラダ全体の話ではありません。Th1/Th2バランスは、体内の部位によってバランスを変えている可能性もあり、母体に悪影響が無いようにカラダが調節していると考えられています。

※参照:日薬理誌(Folia Pharmacol.Jpn.)131. 22~27(2008)

どうやって、正常な免疫バランスに戻るのか?

胎児は、免疫のバランスが崩れた状態で生まれてきます。 Th2優位な状態であるため、生まれた時から、アレルギー体質であるとも言えます。

このままでは問題であるため、Th1を活性化させて、崩れた免疫バランスをもとの正常な状態に戻す必要があります。

Th1は、病原体(細菌やウィルスなど)に接触することで活性化し、発達していきます。

Th1/Th2バランスの戻し方
Th1/Th2バランスの戻し方

通常、自然界では、無菌状態の胎内から出生すると、多くのウィルスや細菌に曝露されます。それにより、速やかにTh1が活性化され、Th1優位な状態へと変化し、免疫のバランスは正常な状態へと戻っていきます。

人間の免疫システムは、不衛生な自然環境を利用して、正常な免疫バランスへとカラダを調節しているとも言えます。

アレルギーになる子と、ならない子の違いとは?

生まれた時のTh2優位な状態を、Th1優位な状態にシフトさせることで、崩れた免疫のバランスは元に戻り、アレルギー体質の状態から脱すると考えられています。

つまり、アレルギーになる子と、ならない子の違いは、成長の段階でTh1が正常に発達するかしないかの違いという事になります。

アレルギーになる子とならない子のTh1/Th2バランス
アレルギーになる子とならない子のTh1/Th2バランス

Th1が正常に発達すれば問題ありませんが、未発達のまま成長してしまうと、生まれた時のTh2優位な状態がそのまま維持され、アレルギーを発症してしまうと言えます。


衛生仮説とは

Th1の発達には、病原体(ウィルスや細菌など)の感染への曝露が必要であるため、あまりに清潔な環境で育ってしまうと、Th1が発達せずに、アレルギーのこどもになりやすいと考えられています。これは、「衛生仮説」とも呼ばれ、アレルギーになる原因の大きな要因であると言われています。

事実、衛生面では劣っている家畜舎に隣接する農家で育った子供たちのアレルギーへの罹患率は、一般家庭で育った子供たちよりも低く、感冒などの感染機会が多いとされる年長の兄弟姉妹をもつ子供や、1歳未満で保育所に預けられた子どもにはアレルギー疾患を発症するケースが少なくなっています。

年を重ねると、自然に治る子がいるのは、なぜか?

子どもの時に、アレルギーを発症し、薬や注射などをいくら使っても治らなかった子どもが、大人になると自然にアレルギーが治る場合があります。あれほどつらく大変だったのは一体何だったのかと思うようなケースです。

アレルギー
アレルギー

これも、Th1/Th2バランスで説明するのであれば、大人になるにつれ子どもの活動範囲も広がり、病原体(ウィルスや細菌など)に接触する機会も増え、未発達であったTh1が徐々に発達していくことで、免疫のバランスが正常に戻り、その結果としてアレルギー症状も無くなっていったと考えることもできます。

また、このような事実は、薬や注射では一時的に症状を緩和することはできたとしても、アレルギーそのものを治すことはできないのではないかという事を示唆しています。

やはり、人間のカラダを正常に戻すのは、人間のカラダそのものであるとも言えます。

子どもをアレルギーにさせないための対策とは?

結論から言えば、子どもに適度に病原体(ウィルスや細菌)に接触させ、自身の免疫力を発達させてあげることが、子どもをアレルギーにさせない対策であると言えます。

無理に不衛生な環境で子どもを育てるという事ではなく、良い意味で適当に育てるほうがちょうど良いのかもしれません。

子どものカラダを清潔にしすぎたり、過剰に除菌したり、子どものことが心配だからといって過保護になりすぎてしまうと、子どもの免疫力が育ちにくい環境になってしまいます。


適度に病原体に接触させる例として、

自然の中の川
自然の中の川

外に出る。

屋外には様々な病原体が存在し、空気中にも浮遊しています。子どもが大きくなってきたら徐々に外の自然にふれさせる機会を作ることも大切です。特におすすめは、動物園です。動物園は、本来人間が生きているはずの自然環境を身近に再現しています。

また、外で遊ぶ習慣をつけさせることは、免疫にとっても良いですが、その他、体力や思考力、コミュニケーション能力の向上など多くのメリットがあります。


BRMGを摂取する。(乳児期)

出生から1歳未満の乳児期は、外に出るのは不安があるかもしれません。そのような場合におすすめできるのがBRMGという成分です。BRMGとは、病原体(カビなどの真菌)に分子構造の酷似した安全な食物繊維であり、カラダは病原体と誤認します。BRMGを摂取することで、外に出なくても病原体に接触した時と同じ状況を作り出すことができます。実際に外に出る前の、良い予行演習にもなります。


※Th1への誘導は、明らかに小児期に弱いため、小児期(出生から12歳ころまで)は注意しておきたい期間です。

まとめ

「衛生仮説」とは、清潔すぎる私たちの生活環境が、逆にアレルギー疾患という問題を引き起こしているというものです。

本来、人間は自然の中で生活していました。やがて、家の中で住むようになり、家の中のウィルスや細菌までも除菌し、カラダも毎日洗い、私たちの生活環境は清潔そのものです。

どんどん私たちの生活は、自然界での本来の生活からずれていっています。衛生レベルに限らず、運動量や睡眠の質、ストレスの受ける量、薬を使う量など、自然界とのずれは大きくなる一方です。

様々な病気が増え続ける現代ですが、自然界とのずれは、すでにカラダの許容範囲を超えたレベルまで来ているのかもしれません。変わりすぎたライフスタイルをもとの状態に戻していく必要があるのではないでしょうか。