シゾフィランとは。
シゾフィランは担子菌類のスエヒロタケを、グルコース液体培地で培養した際に菌体外に産生されるβ-グルカンで、抗悪性腫瘍剤として静脈注射にて用いられています。
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第一章|β-グルカンのすべて
4. β-1,3-1,6-グルカンの生理活性
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シゾフィランは担子菌類のスエヒロタケを、グルコース液体培地で培養した際に菌体外に産生されるβ-グルカンで、抗悪性腫瘍剤として静脈注射にて用いられています。
β-1,3-結合で連結されたグルコースを主鎖にもち、そのグルコース残基約3個に1個の割合でβ-1,6-結合にてグルコース1分子からなる分岐が存在するβ-1,3-1,6-グルカンです。
分子量600万と非常に大きな分子です。また、レンチナンと同じく3重らせん立体構造をもちます。
シゾフィランは分子量が大きく、非常に長い鎖状分子です。そのため、低濃度であっても極めて高い粘性を示します。
この粘性のために薬剤としての調製や体内投与が困難であったことから、抗腫瘍活性を低下させることなく水溶液粘度を減少させるよう、溶液に超音波を照射し、長い分子鎖を切断し短くする方法が検討されました。
シゾフィランの1%水溶液に、19.5kHzの超音波を照射すると、極限粘度が徐々に低下することが観測されます。
長い分子鎖は切断され、分子の長さが短くなることで、粘度も低下していきます。
超音波照射により、シゾフィランの主鎖は切断され、分子量が低下するものの、側鎖のグルコースが切断されることは無く、基本的に照射前と同じ構造を保つことが確認されています。
超音波処理後のシゾフィランについて完全スミス分解、緩和スミス分解の結果、処理前と同じ構造をもつことが証明されています。
シゾフィランの分子鎖は切れますが、まだ分子量も大きく(5万以上)、3重らせん構造は維持されており、活性もあります。
分子鎖はどんどん切れ、分子量が小さくなり(5万以下)、3重らせん構造を保てずに、らせんがほどけます。それによって活性も無くなります。
150℃で熱し、0.1%以下の低濃度にして冷却すると、分子鎖は切れずに(分子量600万は保持したまま)、ほどけてランダムコイルの状態になります。3重らせん構造は無くなり、活性も無くなります。
シゾフィランに超音波を照射し、分子を切断していくと、分子量が5万以上であれば3重らせん構造は維持されますが、分子量が5万以下になると、3重らせん構造を維持できずに活性がなくなります。
構造 | 活性 | 分子量 | |
処理前 | 3重らせん構造 | あり | 600万 |
超音波 (短時間) |
3重らせん構造 | あり | 5万以上 |
超音波 (長時間) |
ランダムコイル | なし | 5万以下 |
150℃ 低濃度冷却 |
ランダムコイル | なし | 600万 |
つまり、これらの結果は、シゾフィランの抗腫瘍効果が、3重らせん構造を形成する5万以上の分子量を必要とすることを示唆しています。