アメリカのルイス・ピレマー博士が出芽酵母の細胞壁成分に「Zymosan(ザイモサン)」と名付けた。
アメリカのニコラス・ディルジオ博士が出芽細胞の細胞壁成分の構造を明らかにし、「β-1,3-Glucan」と名付けた。
「Zymosan」の名称で生体応答に関する実験が行われ、論文発表された。
[Mouse protection studies with zymosan vaccines and propergin sera. Contribution to unspecified immunity (resistance)]Zimmermann.G , 1962;9:412-27 Acta Biol Med Ger.
「glucan」の名称で生体応答に関する実験が行われ、論文発表された。
[Reticul oendothelial function and the immune response]Diluzio.NR, 1963 Nov, 22;142(3595):1078-80.Science
日本の千原呉郎博士が、シイタケ由来のβ-glucan「レンチナン」が生理活性をもつことを論文発表した。
[Inhibition of Mouse Sarcoma 180 by Polysaccharides from Lentinus edodes(Berk.)Sing.]Chihara.G, Nature 222,687-688(17 May 1969)
1985年に日本で天然由来の薬剤として、認可を受けたレンチナンの研究が盛んになる。
スエヒロタケから単離したグルカンであるシゾフィランの研究が増える。シゾフィランも医薬品としての認可を受けています。
その後、グルカンと生体応答の研究は、薬剤との併用研究やその作用機序を求める研究へと推移していく。
β-グルカンに生体応答調節作用があることは当然として、新規生理活性成分との比較試験に用いられたりするようになる。
[Oral administration of high molecular mass poly-gamma-glutamate induces NK cell mediated antitumor immunity]J Immunol.2007 Jul 15; 179(2):775-80
β-グルカンの研究の歴史
β-グルカンの研究の出発点としては、1941年、Pillemer博士のグループが、酵母細胞壁からザイモサンと名付けられた免疫活性化物質を発見した時点があげられます。
しかしながら、この時報告されたザイモサンは粗精製であったため、酵母に由来するタンパク質や糖質などの不純物が混在しており、免疫系を活性化する本体が何であるかは不明でした。
この点について明確な解答が得られたのは1960年代になってからであり、Nicholas博士のグループによりザイモサンの有効成分がβ-1,3-1,6-グルカンだということが示されました。
その後、日本においても担子菌類を中心に研究が盛んに行われ、癌に有効とされる漢方薬・民間薬に使用されていた霊芝などサルノコシカケ科のキノコや、食経験のあるシイタケ、マイタケ、メシマコブやキクラゲなどを始めとした、数多くの菌類の熱水抽出液が抗腫瘍効果を示すことが報告されました。
その中で、強い抗腫瘍活性が認められたカワラタケ、シイタケ、スエヒロタケ由来のβ-グルカンについては、抗腫瘍剤として医薬品に使用されています。
このうち、レンチナン、シゾフィランの抗腫瘍剤は、高度に精製されたβ-1,3-1,6-グルカンであり、過去に行われた数多くの研究から、β-グルカンの構造と抗腫瘍活性との関連について報告されています。
世界中で発表され続ける論文
2018年10月現在、アメリカの医学・生物学分野の学術文献検索サイト「PubMed」※で、「β-glucan」を検索すると約15,000本もの論文が見つかります。
年々、発表される論文数は増え続けています。
※PubMedにおいてで検索ヒットする論文数を意味しています。PubMed(パブメド)とは、アメリカ国立医学図書館の国立生物工学情報センター(NCBI)が運営する医学・生物学分野の学術文献検索サービスです。
論文を発表している研究機関も、ノルウェー、中国、ドイツ、リトアニア、アメリカ、イラン、ブラジル、チェコなど世界中に及びます。