Introduction -導入-
体臭を構成するのは、加齢臭だけではなく、その他にも皮膚から発生する様々なガスがブレンドされて、その人特有の体臭は作られます。
自分では気づかないうちに、スメル・ハラスメントをしているかもしれません。そうならないためにも、皮膚ガスの種類と対策を確認しておきましょう。
皮膚からは、加齢臭やおやじ臭と呼ばれる臭いだけでなく、様々なガスが放出されています。これらのガスの総称を「皮膚ガス」と言います。
人間の皮膚からは、実に100種類以上の物質が出ているとも言われています。
これらのガスが混ざり合ったものが、「体臭」と呼ばれるものです。
個々の皮膚ガスの放出量は、人により異なるため、人それぞれ特有の体臭が形成(ブレンド)されます。
皮膚ガスは、カラダにとって不要となるものや毒物となるものを体外に排出するために備わった、カラダの解毒作用(デトックス)の一つとも言えます。
皮膚ガスには、様々なものがありますが、大きく3つの由来(血液由来、皮膚腺由来、表面反応由来)に分類されます。
①血液由来
揮発しやすい皮膚ガスについては、すでに血管から放出されており、それが直接皮膚表面の血管から放散される経路です。血管は、体中をめぐり肺にも到達しています。そのため肺からもガスは放出され、こちらは口臭の原因にもなります。
②皮膚腺由来
皮膚には、脂腺や汗腺があります。毛根に隣接した脂腺は、皮脂を分泌し、汗腺は汗を放出します。このような経路を通じても、皮膚ガスは放出されます。
③表面反応由来
脂腺や汗腺から表面に出た汗や皮脂の成分が、常在菌や過酸化物(もともと身体から出るものや、紫外線などで発生するもの)と反応することでも皮膚ガスは発生します。特に汗臭い臭いなどが、これにあたります。
皮膚ガスの由来別に、下記のガスについて紹介します。
①血液由来
アセトン
マニキュアやスプレーペイント、染み抜きなどの製品に使用される。ツンと鼻に刺さって喉が渇くようなにおい。体内で自然に生成され排出される。
食事制限(ダイエット)などにより体内の糖質が少なくなると、脂肪の代謝が進み発生する。ケトン体ダイエットは、これにあたります。
対策:
バランスのとれた食事をし、運動などの健康的なダイエットを心がける。
アセトアルデヒド
アルコールが肝臓で酸化されると生じる。アルデヒドは皮膚ガスや呼気として放出されるため、お酒臭さの原因となる。
対策:
アルコールを飲まなければ発生しないのですが、どうしても飲み会の席などに参加する場合もあります。しかし、飲み会の席では、それほど気にする必要はありません。周りの人も一緒にお酒を飲んでいるため、アルコールの臭いに慣れ、臭いの閾値は高くなっているからです。
アンモニア
筋肉疲労により、乳酸+アンモニアが発生する。乳酸は汗として体外へ、アンモニアは揮発性が高いため、皮膚ガスとして放散される。
対策:
疲労を溜めないように、しっかりと睡眠や休養をとることが大切です。
トルエン
ペンキ、シンナーなどの溶剤。このような体内では産生されない化学物質も、経口、吸入曝露などにより体内に入り込み、血液中を流れ、皮膚ガスとして放出される。
対策:
日常的に化学物質が身体に入る場面として考えられるのは、合成添加物の多い食品を食べたり、薬を飲む時など。できるだけ食事内容に気をつけたり、薬に頼りすぎないことも大切です。喫煙する人は、タバコの影響にも注意。
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②皮脂腺由来
酢酸
アルコールは肝臓でアセトアルデヒドになるが、さらに酵素分解されると酢酸になる。
対策:
上記のアセトアルデヒドの対策を参照ください。
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③表面反応由来
ジアセチル
ある化粧品会社により、「おやじ臭」と定義される成分。汗に含まれる乳酸(筋肉疲労により生じる成分)を皮膚表面の常在菌が代謝して作られる。
対策:
皮膚表面反応由来の皮膚ガスの場合は、反応の原因物質を皮膚から取り除くことが対策になります。皮脂や汗をこまめに拭いたりして、清潔にしておくことが一番の対策です。
2-ノネナール
ある化粧品会社の研究で、「加齢臭」の原因物質と発表された成分。パルミトレイン酸(正式名称:9-ヘキサデセン酸)やパクセン酸などの ω-7脂肪酸が酸化分解されることで生じる。活性酸素などにより生じる脂質過酸化物によってもω-7脂肪酸の酸化分解反応は促進され、2-ノネナールを生じる。
40歳以降の人に、2-ノネナールが顕著に検出されることと、年齢とともに、パルミトレイン酸や脂質過酸化物は増加するため、それにより生じる2-ノネナールが加齢臭の原因物質であるとされている。
しかし、なぜ、 2-ノネナールの原料となるω-7脂肪酸が、年齢とともに増えるのかはいまだ不明である。
対策:
基本的には、汗や皮脂をこまめに拭き、清潔にすることが対策です。 2-ノネナールの原料となるω-7脂肪酸のパルミトレイン酸は、体内の余剰の糖質やたんぱく質が存在すると作られるパルミチン酸(中性脂肪)により産生されます。運動不足であったり、筋肉量も少なく、それほどエネルギーが必要ではないのに、食べ過ぎてしまうと、加齢臭の原料がたくさんできてしまうという事になります。
また、活性酸素も2-ノネナールの発生を促進するため、しっかりと休養をとり、ストレスを溜めないことも大切です。
つまり、適度な運動、バランスのとれた食事、十分な睡眠といった健康の基本が、加齢臭の対策となります。
吉草酸(きっそうさん)
汗臭さの原因であり、蒸れた靴下の臭いに例えられる。皮脂+常在菌+化学物質により発生する。正確には、異性体であるイソ吉草酸が、足の裏のにおいの原因である。
対策:
上記のジアセチルに同じ。
皮膚ガスは、カラダにとって不必要な成分であったり、毒性のある成分です。このような成分がカラダからたくさん出てきているという事は、カラダの中に汚れが溜まり始めているとも言えます。
体臭の悪化は、カラダからの不健康サイン?
皮膚ガスからは、カラダからの様々なメッセージを読み取ることができます。
・偏った食事。
・疲れがたまっている。
・お酒を飲みすぎている。
・ストレスが溜まっている。
・運動不足。
・不必要に食べ過ぎている。
・薬に頼りすぎている。
・タバコなど悪習慣をしている。
・免疫力が低下し始めている。
体臭が気になり始めた時は、カラダの声に耳を傾け、自分自身の健康を見直す時なのかもしれません。
年齢であきらめない!
加齢臭などは年齢によるものだからとあきらめるものでもありません。加齢臭の原因物質である2-ノネナールは、確かに年齢の高い人ほど多く検出されますが、実は年齢が高くても検出されない人も同じ数だけいます。
S. Haze, Y. Gozu, S. Nakamura, Y. Kohno, K. Sawano, H. Ohta and K. Yamazaki (2001年). “2-Nonenal Newly Found in Human Body Odor Tends to Increase with Aging”. Journal of Investigative Dermatology 116 (4): 520–524.
世間では、40代以降の人はみんな加齢臭がするかのように思われていますが、実際はそうではありません。
つまり、年齢を重ねたとしても、健康的な生活習慣により、加齢臭のしない人になれる可能性も十分残っていると言えるのではないのでしょうか。