医師が病を治すのではなく、カラダが病を治す。


医学の父が残した言葉。

古代ギリシャの医師ヒポクラテスは、「医師が病を治すのではなく、カラダが病を治す」と言いました。ヒポクラテスは、医学の父、医聖、疫学の祖と呼ばれる人物であり、「ヒポクラテスの誓い(全9項)」は医学校の卒業式などで宣誓されています。

ヒポクラテスは、紀元前460年頃から紀元前370年頃に存在した医師です。

現代に生きる私たちは、薬が病気を治すものと考えている。


逆転してしまった考え方。

1928年に、世界初の抗生物質であるペニシリンが発見されます。1942年に実用化され、第二次世界大戦中に多くの負傷兵や戦傷者を救ったことから、「20世紀における偉大な発見」 とも言われています。

このペニシリンの功績により、「薬というのは人の病気を治すもの」 という考え方が生まれました。

ペニシリン
ペニシリン

抗生物質ペニシリン。
それまでは死に至るしかなかった細菌性の感染症に劇的な効果を発揮しました。


これからは、すべての病気を薬が治すと考えるようになってしまった。


薬の神話。

どんな病気にもペニシリンは多用され、多くの患者が救われる一方で、ペニシリンショックという事件が起きます。一部のアレルギーによるショック症状が出て、死亡者があいつぎました。“薬の神話”への警鐘でした。

それでも、「薬というのは人の病気を治すもの」 という考え方は変わらず、多くの人に広がっていきました。世の中の概念が大きく転換しましたが、歴史的に見れば、まだ100年も経っていない非常に新しい考え方です。

薬の銘柄数
薬の銘柄数

たくさんの薬が誕生しました。
出展:薬価基準収載医薬品の銘柄数 Jpn Pharmacol Ther (薬理と治療)vol.41 no.7 2013


薬は病気を止めるためのもので、病気を治すためのものではない。


薬とは何か。

薬を飲用すると、つらい病気の症状が緩和されていくため、飲用者にとっては病気が治っていく感覚があります。しかし、治しているというのは薬の正確な表現ではありません。

薬は阻害剤
薬は阻害剤

薬は病気を一時的に止めるもの。

病気の症状が起こる経路の一部を阻害することにより、その症状を起こさせないようにする「阻害剤」というのがより的確な表現です。


病気が治っていくのは、人間のカラダのおかげ。


なぜ、病気は治るのか。

病気が治っていくのは、「身体のもつ健康な状態へと戻ろうとする機能」によるものです。薬で病気の症状を止め、楽になっている間に、人間のカラダ自身が病気を治しています。

人間
人間

小さな病気は自然に治る。

風邪や食中毒などは、普段はならないが、一時的にカラダの機能が弱っていることで生じます。このような突発的な病気の場合は、薬で病気を止めている間にカラダの機能が普段の状態に戻れば自然に問題は解決していきます。


人間のカラダは、人間のカラダでしか治せない。


大きな病気ほど、カラダで治すもの。

現代人の抱える大きな病気は、生活習慣(運動・食事・睡眠・ストレスなど)による慢性的なカラダの機能の低下が原因です。そのため、病気を薬で小さくしたり、手術で取り除くことで問題が解決してしまう場合もありますが、根本原因を解決しているわけではないので何度でも再発することがあります。

つまり、人間のカラダの機能が、病気を抑え込める強さをもたない限り、病気を治すことはできないと言えます。


あとがき。

ヒポクラテスは、「医師が病を治すのではなく、カラダが病を治す」と言いました。彼は病気の本質を見抜いていたからこそ、このような言葉を残したのかもしれません。

そして、医学の発展した現代医療でも治せない病気は数多く存在します。その理由の一つに人間のカラダの複雑さがあげられます。例えるなら、人間のカラダは宇宙のようなもので、まだまだ不明な点が多いということです。よくわかっていないからこそ治すことができないし、よくわからないカラダをいじるから問題が起こるとも言えます。

宇宙のような人間のカラダのすべてがわかるのにあと何百年、何千年かかるかはわかりません。もし解決策があるとすれば、人間のカラダにすべて任せ、カラダ自身に病気を治させることなのではないでしょうか。


薬が必要ないのではなく、もっとカラダの力を信じること。


人間のカラダが病気を治すから、薬や現代の医療が必要ないのではありません。つらく苦しい時など緊急の場合は、病気を即座に止めることのできる薬や手術などをうまく利用していくことも必要です。

しかし、病気を治すためにできることは、薬を飲んだり、治療を受けたりすることだけではありません。運動・食事・睡眠のサイクルを改善したり、ストレスの発散をしたりして、カラダの病気を治そうとする機能を高めることも病気を治すことにつながります。

病気になった時に、何かに頼り切るのではなく、自分のカラダには病気を治す力があることを理解することが大切なことです。